コロナ対応の最前線! 感染管理認定看護師への道
2022/9/30
みんなの広場
2024/4
地震や豪雨などの自然災害や感染症の発生が身近な問題となり、個人個人で非常時の備えについて考える機会が増えました。年々利用ニーズが高まる介護施設や事業所においても、緊急事態に備えるBCP(事業継続計画)の策定が義務化となりました。自然災害や感染症の発生時などに備えて、どんなことを取り決めていけばいいのでしょうか。BCPの作成と運用のポイントをおさらいし、その課題点を紹介します。
BCPとは、Business Continuity Planの頭文字を取った言葉で、「事業継続計画」を指します。いま企業や組織において、緊急事態に遭遇した場合でも損害を最小限にとどめ、事業の継続や早期復旧をするための計画を立てることが必須となっています。
介護施設や事業所では、介護報酬改定により2024年4月からBCP策定の義務化が施行となり、緊急時の対応方針や役割分担、対応の手順などの計画が各所で作成されました。しかし計画が整えられていく一方で、実効性という面ではまだ多くの課題も残ります。
能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市では、発災から3か月後もなお、利用者の受け入れを再開できた高齢者施設は3割以下にとどまるというニュースも。特に人員が不足する地域での災害時の復旧の難しさを感じます。
では、いざという時に備えて、BCPでどのようなことを取り決め、活用していけばよいのでしょうか。厚生労働省による「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン」から、自然災害時と新型コロナウイルス感染症発生時それぞれのBCP作成のポイントをあらためて紹介します。
【BCP作成・運用のポイント】
<共通>
・情報収集・共有体制、情報伝達フローを決める
迅速な対応をするために、誰が全体の意思決定を行うのか、誰が何を担当するのかを取り決め、連絡先や報告先、連絡フローを整理すること。
・業務の優先順位を整理する
非常事態時の職員の不足や設備のダメージなどを想定し、可能な範囲でサービスを提供できるよう、業務の優先順位を整理すること。
・普段から周知、研修、訓練を行う
緊急時に計画を行動に移せるよう、平時から関係者への周知やシミュレーション、計画の見直しを行うこと。
<自然災害>
・「事前」の対策と「被災時」の対策をわけて準備
事前に準備できること(設備・機器・什器の固定やインフラのバックアップ)、発災したときに行うこと(初動対応や人命安全のルール)をわけて考え、備えること。
<感染症>
・感染(疑い)者が発生した場合の対応シミュレーション
・感染や濃厚接触者になることなどにより職員が不足する場合の職員確保体制の検討・応援依頼
自然災害、感染症どちらの発生時においても、事業所に求められる役割は「サービスの継続」「利用者の安全確保」「職員の安全確保」です。これを行うためには、施設や事業所が抱えるあらゆるリスク(地理的・技術的・人為的など)をまず洗い出し、それがどの程度の影響力(大きさ・頻度)をもつのか整理する必要があります。例えば、停電で通信機器が使えなくなった場合、どのような影響が出るかを考え、平時からSNSなど代替の通信手段を複数使うようにすることなども有効です。
BCPを策定したはいいけれど、これを実際にどう回せばいいのかわからない……という悩みをもっている方もいることでしょう。まずは先述のガイドラインや他所の事例などを参考にしながら、経営者と職員が一緒に計画のシミュレーションをすることから始めてみてはいかがでしょうか。
(引用)介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関するガイドライン
災害時に医療介護サービスの提供を継続するためには、平時からの地域との連携も重要だとされています。患者や利用者の安否確認をはじめ、入居施設や自宅からの避難場所への搬送、診療場所の確保など、非常時に新たに発生するタスクを地域で分担することが、迅速なケアにつながります。
地域との連携は、事業所が主体となって普段から地域住民との交流機会をつくるなどして取り組んでいるところもありますが、多くの地域・事業所で課題点となっているようです。2023年に厚生労働省が行った介護事業所の調査では、災害対応訓練への地域住民の参加有無について「参加も求めておらず、地域住民の参加はない」という回答が約半数にのぼりました。その理由としては、感染症対策により大人数での訓練が難しかったり、対応する職員が確保できないなどといった実状があるようです。
この課題を受け、在宅医療・介護分野において、地域のBCPを策定するモデル事業が2022年度から複数の自治体で行われています。特に在宅医療・介護の現場は散在することから、行政や事業所、コミュニティの連携が不可欠なのです。
各地域で共通課題として挙がっているのが、人工呼吸器などが必要な患者のための電源確保や、安否確認などの情報共有・発信の方法、各機関や専門職の協働の在り方といったことです。モデル地域の一つ、岡山県倉敷市では西日本豪雨災害からの教訓を経て、医師会と災害拠点病院が中心となって、災害時の情報共有ツールを開発。さらにBCP策定に向けて、高齢者施設の運営者同士によるワークショップなども行っています。
いま動き出しているモデル事業が今後どのように実装され、ほかの地域にも波及していくのか、期待したいところです。
参考文献:
「介護サービス事業者における業務継続に向けた取組状況の把握及びICTの活用状況に関する調査研究事業」(厚生労働省)
令和4年度在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業
連携型BCP・地域BCP策定モデル事業
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