小林光恵さんの おやすみコラム #010「一憂一喜」
2023/8/11
みんなの広場
2025/4
友人Aと久しぶりにお酒を飲んだ先日のことです。
酔うとともに楽しくなった私は、話の成り行きで、56歳のときに31年ぶりに看護師としてパートで採用してもらった話をしました。「やっぱり永久ライセンスだったよ!」と最後に付け加えて。
するとA(アラフィフの女性。看護師)が急に顔を曇らせ、酔った目で私を睨みつけて言ったのです。
「そういうことを、ブランク恐怖症の私の前でよく言えましたね!」
「なに? ブランク恐怖症って」
「知らないんですか? 看護師の転職情報サイトとかで最近流行っている言葉ですよ。パート募集とかで、ブランクOKとあるのは、出産や子育てのために、一時的に、仕事から離れていた方OKという意味なんですよ! それを私、45歳の時に知ったんです。以来、ブランクの年数が増えるとともに復職への絶望感が強まって」
「でもさあ」と私は返しました。「Aちゃんは、看護職こそは35歳のときに離れたかもしれないけど、その後出産・子育てやいろんなアルバイト経験を通して、その貴重なスキルを会得したわけでさ、それが、ひいては看護業務にだって生きるはずだし、そもそもブランクという言葉はどうなんだろう……」
「そういう呑気さに、むかつくんです!」
そのあとAは我に返ったような表情になり、そしてうなだれて「ごめんなさい」と言うと、ブランク恐怖症は、Aの造語で、巷で流行ってもいないことも明かしました。
復職のための研修項目の大幅増設など、さまざまなブランクの形にフィットした手厚い復職支援も人手不足に一役買うように思います。
著者/小林 光恵さん | 元看護師。著述業。つくば市在住。 エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。 看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。 <新刊情報> ナイチンゲールの子孫が主人公の小説 『ナイチンゲール7世』(イースト・プレス)が発売中! <多数のメディアで連載中!> ●小説 『令和のナースマン』 (月刊ナーシングキャンバス 株式会社Gakken) ●エッセイとイラスト 「アンチヘブリンガン」 (月刊ナーシング 株式会社Gakken) ●コラム 小林光恵の「ほのぼのティータイム」 (Aナーシング 日経メディカル) ●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」 (Will Friends 日本看護学校協議会共済会) ●ドクターズコラム (健達ねっと メディカル・ケア・サービス) など |
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