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2025/4

看護師のためのマネー&キャリア相談室#07「訪問看護へのキャリアチェンジ」

看護師のためのマネー&キャリア相談室#07「訪問看護へのキャリアチェンジ」

この先、私はどんなキャリアを歩んでいくのだろう。将来のことを考えると、仕事だけじゃなく、お金の計画もきちんと立てなくては。でもこれ、誰に相談すればいいのかわからない……。

そんな看護師の皆さんのお悩みに、看護師の先輩であり、現在それぞれキャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナーとして活躍されている濱田安岐子さんと中林友美さんがズバリお答えします。第7回は、病院勤務のナナさんからのキャリアチェンジに関するご相談です。

「病院勤務から訪問看護への転向。興味はあるけど不安……」

看護師・ナナさん(28歳・総合病院勤務7年目)のお悩み

訪問看護師の仕事に興味を持つようになりました。しかし、これまでの経験が本当に生かせるのか、病院勤務からのキャリアチェンジにいまいち自信が持てず、不安さえ感じます。キャリアチェンジに向けて検討すべきこと、職場選びのポイントを教えてください。

訪問看護へのキャリアチェンジで検討すべき3つのポイント

濱田さんのアドバイス

訪問看護に興味があるのですね! これまでの医療機関での勤務とは違うので不安もあることでしょう。そんなナナさんに検討していただきたいポイントが3つあります。①キャリアチェンジに対する不安の原因②訪問看護で生かすことができる経験③職場選びです。新しい職場に変わる時は誰でも不安に思いますよね。一緒に考えていきましょう。

1. キャリアチェンジに対する不安の原因

そもそも、キャリアチェンジ(Career Change)とは、これまでの職業や業界・職種を変えて、全く異なる分野や仕事に転職することを意味します。きっとナナさんも、医療機関と訪問看護では全く違う仕事をしていると思っているのではないでしょうか。何が違うのかを明確にすることで、不安が少し解消されるかもしれません。
以下、訪問看護と医療機関の看護の違いの概要です。

 

訪問看護

医療機関の看護

勤務場所  利用者の自宅や施設  病院、クリニックなど
対象者  在宅療養者、高齢者、難病患者など  急性期・慢性期の治療目的の入院患者、外来患者
看護体制  1対1でじっくり、個別対応が中心  多数の患者をチームで看る
医療体制  医師が常駐しておらず、電話指示などで対応  医師や他職種がすぐそばにいる体制
判断力  看護師の「一人判断」が求められる場面が多い  医師や先輩看護師にすぐ相談できる体制が多い
移動  車や自転車での移動が多い(訪問先に応じて)  基本的に同じ施設内での勤務のため、移動はない
時間の流れ  比較的ゆっくり、生活リズムに沿ったケア  緊急対応や業務量で時間に追われることも

 

いかがでしょうか。想像と一致していますか?
医師がそばにいないために判断を迫られる場面に不安を感じる看護師の方が多いようですが、最近では、医師や先輩看護師とすぐに連絡が取れる体制を作っている訪問看護ステーションも多いですよ。

2. 訪問看護で生かすことができる経験

あなたは医療機関で看護をした経験が7年もあります。素晴らしいキャリアです! これまで培ってきた自分の強みを意識して、訪問看護へのキャリアチェンジを考えることができると思います。そこでまず、医療機関における看護経験を棚卸ししてみましょう。どのような患者さんにどんな看護をしたのでしょうか。看護部の教育体制の中でケースレポートを書いたり、経験の振り返りをレポートしたり、ポートフォリオを作成していれば自分自身の経験や強みが分かるはずです。まずは、このような強みや経験を整理して、訪問看護に生かせるか検討してみるとよいでしょう。看護実践は働く場所によって変わるものではありません。しっかりと看護に向き合ってきた経験はどこに行っても生かすことができます。自分ひとりで検討するのが難しい場合は、キャリア支援をしてくれる先輩の力を借りて考えてみることをお勧めします。

ただ、少し厳しいことを言えば、7年間の経験が看護ではなく日々の作業となっている方は、場所と方法が変わることで何もできなくなってしまいます。言い換えれば、看護の本質を意識した経験があればこそ、自分の成長につながっていることに気づくことができるのです。もしも、成長できていないと思っている場合は、新たな気持ちで看護実践のトレーニングを受ける覚悟が必要です。訪問看護への転向を考えたきっかけや動機は何なのか、そして今の自分に足りないものは何なのか。新たな職場でトレーニングを始める覚悟と、自分自身の課題への向き合い方がその後のキャリアに大きく影響します。

3. 職場選びのポイント

経験の棚卸しをすると、どのような職場が自分に合っているのかがわかってきます。看護を通してどのような自己実現をしたいのかといったキャリアデザインを意識すると、継続して就業できる場を見つけられるでしょう。ポイントは給与や勤務時間のような条件ではなく、自分はどのような看護を実践したいのか。さらに訪問看護のように経営者が近い存在であった場合、経営者の考え方や方針と現場に乖離がないかをリサーチできれば、職場とのマッチングは成功に近づきます。いくら経営者が素晴らしいことを言っていても、それを実現するためのマネジメント力がなければ、入職してからがっかりすることになりますから。

いかがでしょうか。これからの日本の状況を考えれば地域医療や地域看護は今以上に求められ、今以上に充実していくでしょう。訪問看護へのキャリアチェンジが自己実現につながるように、少し立ち止まって検討してみてください。ぜひ、幸せなキャリアを選択してくださいね!

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濱田安岐子さん、中林友美さんの写真
濱田 安岐子さん
NPO法人看護職キャリアサポート/株式会社はたらく幸せ研究所 代表
看護師/国家資格キャリアコンサルタント/ハラスメント相談員

看護師臨床11年、看護教員3年を経験した後、2006年からフリーランスとして独立。2010年、NPO法人看護職キャリアサポートを設立し、看護師が元気に自分らしくキャリアを継続できるように活動中。2018年には、株式会社はたらく幸せ研究所を設立。健康と幸福学で幸せに働ける社会を目指している。
中林 友美さん
フローレンス FP オフィス 代表
看護師/ファイナンシャルプランナー/国家資格キャリアコンサルタント

長らくがん看護に従事し副看護師長を経験後、FPなどの資格を取得。多忙で自分のことをつい後回しにしてしまう看護師が自分らしく輝く人生を歩むために、2019年よりフローレンスFPオフィスを立ち上げ、日々活動中。

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