看護師のためのマネー&キャリア相談室#04「転職して給与を上げたい!」
2025/1/21
みんなの広場
2025/5
この先、私はどんなキャリアを歩んでいくのだろう。将来のことを考えると、仕事だけじゃなく、お金の計画もきちんと立てなくては。でもこれ、誰に相談すればいいのかわからない……。
そんな看護師の皆さんのお悩みに、看護師の先輩であり、現在それぞれキャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナーとして活躍されている濱田安岐子さんと中林友美さんがズバリお答えします。第8回は、前回に続き、病院勤務のナナさんからの訪問看護への転職に関するご相談です。
看護師・ナナさん(28歳・総合病院勤務7年目)のお悩み
訪問看護師の仕事に興味を持つようになりました。しかし、これまでの経験が本当に生かせるのか、病院勤務からのキャリアチェンジにいまいち自信が持てず、不安さえ感じます。キャリアチェンジに向けて検討すべきこと、職場選びのポイントを教えてください。
中林さんのアドバイス
今回はナナさんの転職のご相談の中でも、気になる「お金」の面について一緒に考えていきましょう。
「訪問看護に興味があるんです。でも、病院よりお給料が下がると聞いて、不安で……」
そんな声をよく耳にします。きっとナナさんも、同じように気になっているのではないでしょうか。キャリアの選択を考える時、「やりがい」も「お金」も、どちらも大切。それなのに、どちらかを選ばなければいけないような気がして、モヤモヤしてしまうことってありますよね。
ナナさんにまずお伝えしたいのは、“収入”の見かけだけでは本当の価値はわからないということです。訪問看護の給与体系は、基本給に加えて訪問件数に応じたインセンティブがつくことが多く、ステーションの場所や訪問地域、訪問件数、移動手段などによっても収入に差が出るのが一般的です。
一見すると病院より年収が低くなってしまうかも……と感じるかもしれませんが、実際は、自分自身の裁量次第で残業の調整が可能だったり、オンコール手当(緊急時の呼出に対応できるよう待機することへの手当)が支給されたりと、トータルで見ると手取りや生活の余裕が大きく変わることもあります。特に、オンコール当番を積極的に担える看護師は、収入アップはもちろん、スタッフからの信頼も厚くなります。
自分がその職場から何を得られるのかだけでなく、「自分は何を提供できるか」「どう貢献できるか」を考える視点がとても大切です。「あなたと一緒に働きたい!」そう思ってもらえるように、準備していきたいですね。
転職先を探す方法についても、少し深掘りしてみましょう。
最近は「転職=転職エージェント」というほど利用者が増えており、まずは3〜4社に登録して、対応や求人情報の質を見極めながら徐々に絞っていくのが一般的のようです。利用者にとっては登録無料で気軽に相談できて便利ですが、その一方で、親身に対応してくれるエージェントの背後では、病院などの採用側が看護師の年収の2〜3割もの手数料を支払っているという現実があります。たとえば、あなたの年収が500万円なら、病院はエージェントに100〜150万円を支払っているかもしれません。
看護師は常に求人がある職種です。だから「自分には価値がある=高額な紹介料が動くのも当然」と思う方もいるかもしれませんが、それだけのお金が動くとなると、こちらの都合ではなく「とにかく早く決めたい」「すぐに紹介したい」といったエージェント側の都合が入り込む可能性もあります。採用側からも「こんなに高いお金をかけて採用したのだから……」という、見えないプレッシャーを感じることもあるかもしれません。「タダより高い物はない」ということわざを忘れずに、自分のキャリアを、誰かのビジネスの都合で決められないようにしたいものです。
転職の主導権は自分にあるという気持ちを忘れず、エージェントは“情報のひとつ”として冷静に利用する余裕が大切です。
そんな中で、私が以前から注目しているのが「リファラル採用(紹介による採用)」です。
知人や同僚からの紹介で職場を知ることで、現場の雰囲気や働き方についてリアルな声が聞けますし、病院側にとっても「信頼できる人からの紹介」なので安心感があります。エージェントを介さないことでコストが抑えられ、結果として給与条件や勤務条件の交渉がしやすくなることもありますし、知り合いのバックアップがあることで、入職後の不安が少なく、離職率が低くなるというメリットもあります。
転職は「今の働き方を見直すチャンス」であると同時に、これからの人生設計を立て直すタイミングでもあります。
退職金制度や確定拠出年金の扱い、社会保険の切り替え、税金の影響……。目の前の年収だけでなく、5年後、10年後の自分がどう働き、どう暮らしていたいのか。そんな視点を持っておくと、転職という選択がより納得のいくものになるはずです。
今はSNSやインターネット検索で多くの情報を得られますが、まずは母校の先生や職場の先輩、知り合いのつてをたどって、実際に訪問看護に転職した人の話を聞いてみましょう。利害関係のない看護師仲間の“本音の話”はとても貴重です。インターネットやSNSだけでは得られない情報に積極的に触れてみましょう。そして、あなた自身が「こう働きたい」「こんなふうに暮らしたい」と思える未来を、どうか大切にしてください。ナナさんのその一歩が、きっと自分らしいキャリアへの道につながっていきます。
心から、応援しています。
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濱田 安岐子さん NPO法人看護職キャリアサポート/株式会社はたらく幸せ研究所 代表 看護師/国家資格キャリアコンサルタント/ハラスメント相談員 看護師臨床11年、看護教員3年を経験した後、2006年からフリーランスとして独立。2010年、NPO法人看護職キャリアサポートを設立し、看護師が元気に自分らしくキャリアを継続できるように活動中。2018年には、株式会社はたらく幸せ研究所を設立。健康と幸福学で幸せに働ける社会を目指している。 | 中林 友美さん フローレンス FP オフィス 代表 看護師/ファイナンシャルプランナー/国家資格キャリアコンサルタント 長らくがん看護に従事し副看護師長を経験後、FPなどの資格を取得。多忙で自分のことをつい後回しにしてしまう看護師が自分らしく輝く人生を歩むために、2019年よりフローレンスFPオフィスを立ち上げ、日々活動中。 |
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