みんなの広場

2023/5

小林光恵さんの おやすみコラム #007「そんな矢先に不安」

小林光恵さんの おやすみコラム #007「そんな矢先に不安」

そんな矢先に。

この文言を、ライターの仕事をして30年あまりの間、何度使ったことでしょう。 文中に文字として書かずとも、「そんな矢先に」の意識で書いている「そんな矢先に」を含めたら使用頻度は大変な多さだと思われ、<使い過ぎたバチとして、我が身にいつか「そんな矢先に」な事態がふりかかるのではないかしら>と、考えたことがありました。

実家の両親(父・93歳、母・91歳/共に要介護1)の二人暮らしをなんとかサポートしてきましたが、いよいよその形が難しい状況となり、父には老健に入所、母には私の自宅に転居してもらうこととなり、それに向けて私は介護のキーパーソンとしてもろもろの準備・調整をしているところです。無事、移行が進んでほしい、と祈るような思いで一つ一つのことを。

そんななか<いま、例のバチが当たったらどうしよう>という不安が発生。文章を書くとしたら、いまは絶好の「そんな矢先」の使いどころですから。

その不安が胸のうちにうっすらと居座ったままでした。しかし、講演先で声をかけてくれた30代の女性と、母の訪問介護を担当してくれている60代の女性からの「私は介護できないまま親を送ってしまったから、高齢になったご両親の介護ができてうらやましい」という内容のコメントによって、<そうだよ、私は運がいい>と思うと同時に自身の状況を俯瞰でとらえることができ、親の介護ができてうれしいという気持ちを思い出すことができ、そしたら「そんな矢先に不安」がすっと消えたのです。

著者/小林 光恵さん
元看護師。著述業。つくば市在住。
エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。

看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。2023年出版を目標に、ナイチンゲールの子孫が主人公の小説を鋭意執筆中。

<多数のメディアで連載中!>
●小説 『令和のナースマン』
(月刊ナーシング 株式会社Gakken)
●エッセイとイラスト 「アンチヘブリンガン」
(月刊ナーシング 株式会社Gakken)
●コラム 小林光恵の「ほのぼのティータイム」
(Aナーシング 日経メディカル)
●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」
(Will Friends 日本看護学校協議会共済会)
●ドクターズコラム
(健達ねっと メディカル・ケア・サービス)
など

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