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2024/2

小林光恵さんの おやすみコラム #016「名前は、呪(しゅ)だから」

小林光恵さんの おやすみコラム #016「名前は、呪(しゅ)だから」

<便箋、一筆箋、返信用封筒のいずれも、相手の名前のところで折ってはいけない>
新人編集者だった頃に上司Nさんが教えてくれたこと。一応、教えを守りました。

その数年後に読んだ『陰陽師』(作:夢枕獏)に、安倍清明が友人に<この世で一番短い呪とは、名だ>と話すくだりがあった。呪とは呪文のようなもので、現代の自己暗示やマインドコントロールと置き換えてもよいもので、つまり名前は存在に大きく影響し意味や個性をもたらしている呪なのだ。私はそう捉え、Nさんの教えに遅まきながら納得。そして減量がうまくいかなかったある時には、自分の名前を縦長の痩せた感じに書いてみたり、横幅大きく書いてその紙を雑巾のように絞ってみたりと脱線もしました……。

入院やショートステイなどで使用した母の大量のタオルを、現在は私が使用しています。それらの両端に私がマジックで記入した母の名前が、ちょうど洗濯物干しのピンチハンガーのピンチではさむ位置になってしまい、毎回必ずそこを避けてはさんでいます。そうしながら、手紙類だけでなく、いろんな場面で、人の名前の文字をうっかり踏んだり、液体をこぼしたりなどしないで大切にしようと決めた次第です。

ところで、患者さんや利用者さんのたとえば衣類のタグに記名がある場合、スタッフの立場としては名前の確認に手間取ることがあるのではないか、と想像します。私物の記名あれこれについて、医療介護の全体レベルで検討する機会があってもよいような気がします。

著者/小林 光恵さん
元看護師。著述業。つくば市在住。
エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。

看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。2024年出版を目標に、ナイチンゲールの子孫が主人公の小説を鋭意執筆中。

<多数のメディアで連載中!>
●小説 『令和のナースマン』
(月刊ナーシングキャンバス 株式会社Gakken)
●エッセイとイラスト 「アンチヘブリンガン」
(月刊ナーシング 株式会社Gakken)
●コラム 小林光恵の「ほのぼのティータイム」
(Aナーシング 日経メディカル)
●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」
(Will Friends 日本看護学校協議会共済会)
●ドクターズコラム
(健達ねっと メディカル・ケア・サービス)
など

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