小林光恵さんの おやすみコラム #004「大人のがん泣き」
2023/2/16
みんなの広場
2023/7
5月から私の家で暮らすようになった母(91歳)が、6月下旬に転倒による骨折で入院、手術をしました。無事経過し、翌日にはリハビリ病棟へ転棟予定だった術後10日目、腸閉塞と肺炎となり重症部屋に――。
そんな状況となり、2日と空けず着替えなどを持参して病棟を訪ねています。コロナの状況を留意した面会禁止のため、荷物のやりとりの際にナースに母の様子をおしえてもらいたくて。
業務で忙しいみなさんを煩わせないよう、訪ねるのはなるべく控えようと思っていても、『となりのトトロ』のサツキとメイがお母さんの入院先へと向かうときのような心持ちとなり、出かけてしまう。
病院へ向かう車中では、一瞬の面会で目にした、イレウスチューブ挿入直後のときの横たわる痩せた母(体重27キロ)の様子が目に浮かぶ。病棟へのエレベーターに乗るころには、心配と不安の塊になっており、いつのまにか目頭がじわっと濡れてきてしまう。これでは涙目で訪ねることとなって恥ずかしいし、声もくぐもってしまうと思い、あわてて深呼吸したり手のひらで目元に風を送ったりするのですが、なかなか平静にはなれず困ったものでした。
最近、それを回避する術を見つけ実行中です。ナースのみなさんに一回で言葉を聞き取ってもらえるようはっきりと「小林〇〇〇の家族です」と発声することをFA宣言と名づけ、病院入口あたりでは「FA来院」「FA参上」、そしてスタッフステーション前に着いたなら「よし、FA宣言だ」などと心の中でつぶやいてから、発声。FAはスタッフとして用いる略語のため、客観性や冷静さをもたらしてくれるようです。
ナースなどスタッフのみなさんが優しく対応してくれて泣きそうになったときも、この術を活用しています。
FA、みなさまに、いつも感謝。
著者/小林 光恵さん | 元看護師。著述業。つくば市在住。 エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。 看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。2023年出版を目標に、ナイチンゲールの子孫が主人公の小説を鋭意執筆中。 <多数のメディアで連載中!> ●小説 『令和のナースマン』 (月刊ナーシング 株式会社Gakken) ●エッセイとイラスト 「アンチヘブリンガン」 (月刊ナーシング 株式会社Gakken) ●コラム 小林光恵の「ほのぼのティータイム」 (Aナーシング 日経メディカル) ●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」 (Will Friends 日本看護学校協議会共済会) ●ドクターズコラム (健達ねっと メディカル・ケア・サービス) など |
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