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2024/3

【イベントレポート】日本看護サミットでの事例紹介から、看護職の生涯学習支援を考える

【イベントレポート】日本看護サミットでの事例紹介から、看護職の生涯学習支援を考える

離職、価値観の多様化…現場を取り巻く課題を一緒に考える

リレートーク後には、看護職を取り巻く仕事環境や、地域全体を巻き込んだ看護職の育成について、登壇者と会場の参加者による討論が行われました。看護職の育成と一口に言っても、課題は多岐にわたります。現場からの切実な悩みがさまざま寄せられました。

職員の多様性に適した研修の難しさ、職員間の学習レベルの差

当院では生涯学習の体制を整えているものの、入職する看護師は新卒者だけでなくさまざまな経験や背景を持っている看護師もいるため、それぞれに合った研修を現場で企画することに困難を感じています。また自宅で行えるeラーニングも導入しているものの学習レベルに個人差が出てしまっています。

これに対して、武蔵野中央病院でポートフォリオを推進する大西氏が助言しました。

「学習を体系化することは大事ですが、『こうでなくてはいけない』という考えから離れてみることも重要だと思います。我々が取り組んでいるポートフォリオも、対象の新人だけでなく、運用する中堅職員も一緒に育っていくツールだと考えて柔軟に活用していきたいと思っています」(大西氏)

 

看護職の教育における地域連携の重要性

訪問看護ステーションは少人数の施設が多く、施設内だけで生涯学習を支援していくのに限界があります。そのため地域全体で看護師を育てるという視点がとても大事だと感じます。看護師が地域コミュニティに入っていき、土地の文化や課題を理解していくことも、訪問看護の教育において培うべきではないでしょうか。

新人看護職の離職スピードが年々早まっていることを危惧しており、特にコロナ以降は退職理由が分からない状況が続いています。本講演を聞いて、新人看護職のスタートをどう支えていくかが重要だと再認識しました。(医療機関と)基礎教育の分業と連携について本格的に考えなくてはいけないのだと感じました。

これに対して、山形県立保健医療大学看護学科で教鞭をとる菅原京子氏が、教育現場と実践現場の連携の重要性を強調しました。同氏は、地方の小規模病院等で地元住民の多様な健康問題に対応できる「地元ナース」の養成プログラムをけん引。大学教員と病院の看護師の相互交流などを通して、現在の看護教育と看護実践の相互理解を促進しています。

「これまで小規模病院に従事されている方々から看護実践のすばらしさや地域住民の信頼について学びました。学生にとっても、実践している方々にフラットに質問できることは非常に効果的です。実践現場の方々には大学との連携で資材を活用していただき、教員側は現場との連携で、研究領域の先をゆく実践を学んでいってほしいと思います」(菅原氏)

看護サミット 統括総論の様子▲山形県立保健医療大学 看護学科 教授/看護実践研究センター センター長 菅原京子氏

討論からは現場の方々のさまざまな苦悩が伝わりましたが、それ以上に、他の施設の取り組みから学び得ようとする参加者の前向きな姿勢が印象に残りました。また、施設間の垣根を越えて、地域全体で取り組むことの重要性を再認識しました。

看護職の学習機会の支援を通して、長く働き続けられる環境にどう導いていくのか。学ぶことと働くことの関係について、考えさせられる機会となりました。

<参考>
令和3年度 看護職員の向上に係る研修事業の実施状況について

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