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2024/10

小林光恵さんの おやすみコラム #024「懐いてしまいそうな温かさ」

小林光恵さんの おやすみコラム #024「懐いてしまいそうな温かさ」

市の集団健診に出かけた先日、<どれどれ、感触はどんなかな>と思いながら、採血の順番待ちをしていました。ナースの手元に注目しながら。

医療用手袋の代表的な材質は、プラスチック製=①ポリ塩化ビニル、②ポリエチレン、ゴム製=③合成ゴムのニトリル、④天然ゴムラテックスの4つ。それぞれの特徴(防護効果、強度・耐久性、作業性能、価格など)を比較して、おすすめの使用シーンが提示されていますね。
その比較に、ぜひ【その手袋で触れられた人の感触】といった項目を入れてほしいと、私はかねてから考えています。そうすれば使用者が、手をあてる、マッサージする、などの行為別に手袋を選ぶことができるから。どの感触にも違いがないなら、そのことが比較表に付記してあるといいですね。

そして私の採血の番に。手袋の材質は③のようでした。
その採血は、感触を確認している暇などないくらい速やかに進み、ナースが私の左腕に止血のものを貼ってくれました。その時です。
腿上に置いていたカーディガンがするりと足元方向へとずれたため、咄嗟に手を伸ばすと、ナースが私の左手首をぐっとつかむと同時に私の右肩を支えたのです。
私は体動の訳と心配をかけたことをすぐに詫びながら、内心泣きそうでした。手首と肩に触れたナースの手がとても温かかったから。なんだか、とても。もし猫だったなら、彼女の足に何度も耳をこすりつけて、懐いてしまったことでしょう。

比較の項目に、さらにもう一つ追加してほしくなりました。手袋の熱伝導率です。手の温かさが伝わりやすいほうがいい場合とそうでないほうがいい場合があると思うので。
あっ、それと、装着すると熱が発生するような手袋があってもいいような気がしますが、どうでしょうね。

著者/小林 光恵さん
元看護師。著述業。つくば市在住。
エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。

看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。

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(Aナーシング 日経メディカル)
●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」
(Will Friends 日本看護学校協議会共済会)
●ドクターズコラム
(健達ねっと メディカル・ケア・サービス)
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