おしえて、先輩! 看護師のためのマネー&キャリア相談室#03「転職活動、どうしよう…」
2024/12/17
みんなの広場
2025/1
この先、私はどんなキャリアを歩んでいくのだろう。将来のことを考えると、仕事だけじゃなく、お金の計画もきちんと立てなくては。でもこれ、誰に相談すればいいのかわからない……。
そんな看護師の皆さんのお悩みに、看護師の先輩であり、現在それぞれキャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナーとして活躍されている濱田安岐子さんと中林友美さんがズバリお答えします。題して「おしえて、先輩! 看護師のためのマネー&キャリア相談室」。
第4回は、クリニック勤務5年目、今の職場への不満から転職を考え始めているミキさんから寄せられた相談を紹介します。
看護師・ミキさん(32歳/クリニック勤務5年目)のお悩み
クリニックに勤めて5年目となります。看護師の仕事にはやりがいを感じていますが、今の職場に不満があるため、転職しようか考えています。その場合、今よりも給料が上がることを望んでいますが、どのように転職活動を進めれば自分の望むキャリアを築けるか、悩んでいます。
中林さんのアドバイス
クリニック勤務5年目の今、転職を考えられているとのこと。そして、給与アップを希望されているのですね。そんなミキさんに、私からは、主に「お金」の視点で具体的なアドバイスをお伝えします。
転職活動を始める前に、まずは現在の給与や待遇を正確に把握することから始めましょう! 給与の内訳や仕組みを理解することで、転職活動の条件検索に役立つだけでなく、自分の価値を冷静に見つめ直すことができます。
最近では、給与明細が電子化されている場合も多く、メールやアプリで「振り込み金額(手取り額)」を確認するだけで終わってしまい、細かな内訳を見逃していることがあります。ミキさんはどうでしょうか?
ここでは、給与明細の見方をしっかりと解説しますので、実際の明細を用意して確認してみましょう!
給与明細は主に 「勤怠」「支給」「控除」 の3つの項目で構成されています。それぞれの内容を一緒に見ていきましょう。
1. 勤怠
勤怠欄には、勤務日数や労働時間、残業時間などが記載されています。これを確認することで、給与計算の基となる勤務データが正確であるかを確認できます。特に、申請した残業時間が正しく反映されているか、勤務期間が正確であるかをチェックしましょう。
2. 支給
支給欄には、勤務先から支払われる金額の内訳が記載されています。主なポイントを確認してみましょう。
基本給:正社員をはじめ、契約社員や非正社員でも設定されることがある給与のベースです
各種手当:夜勤手当、休日手当、残業手当、通勤手当などが含まれます
ココにご注意!
職場によっては、基本給を低く設定し、各種手当を充実させることで月額の総支給額を高く見せているケースがありますので、注意が必要です。ミキさんが「給料を上げたい」という希望は、単に月額の手取り額を増やしたいということよりも、年間の総支給額を増やしたいということですよね。賞与(ボーナス)は基本給を基準に計算されることが多いため、月額給与(総支給額や手取り額)や「賞与●か月分」という説明だけで判断せず、基本給の金額をしっかり確認して計算してみると、年間の総支給額の違いがわかると思います。
3. 控除
控除欄には、給与から差し引かれる金額が記載されています。控除額は家族構成や収入によって異なりますが、一般的には総支給額の20~25%と言われています。
主な控除項目は以下の通りです:
<社会保険料>
健康保険:病気やケガに備える保険(勤務先(雇用主)と労働者が半分ずつ負担(労使折半))
雇用保険:失業に備える保険(基本的に労働者が負担)
厚生年金保険:老後や障害時、遺族の生活を支える年金保険(国民年金保険料を含む)(労使折半)
介護保険:40歳以上が対象(健康保険の一部として労使折半)
<税金>
所得税:年間の所得金額に応じて国に支払う税金
住民税:前年の所得を基準にした地方自治体に支払う税金
※給与明細で疑問点がある場合、勤務先の総務課、人事課など(年末調整の際に書類を提出するところ)に問い合わせてみましょう。
給与明細を確認すると、現在の職場での評価や、自分が社会保険料や税金を納めることで社会に貢献していることが改めて見えてきます。社会保険料の負担は重く感じるかもしれませんが、勤務先が自分と同じ額を負担しているおかげで、安心して働ける基礎が成り立っています。この仕組みを知ることで、働くことを新しい視点でとらえ直すきっかけになるのではないでしょうか。
就職当時からの給与明細があるなら、変化や成長を振り返るのもいいですね。これにより、自分の成長を再認識し、次のキャリア選択のヒントを得られるはずです。また、自分が提供している価値が適切に評価されているかを冷静に見直すことで、次のキャリアの方向性をより明確にすることができます。
給与は、仕事を通じて受け取る対価として非常に重要な要素です。しかし、職場の価値はそれだけにとどまりません。実際には、「働きがい」「職場の人間関係」「昇給制度やキャリアパス」など、給与以外の価値も大切です。これらの視点を持つことで、目の前の魅力に惑わされず、より長期的なメリットを見極められるはずです。さらに、次のような気づきが得られるかもしれません。
「実は今の職場の待遇は思っていたよりも良いかもしれない」
「やっぱり転職しよう! 今なら自信を持って新しい職場を探せる!」
どちらにせよ、こうした見直しが次のステップに進む大切な一歩になるのです。
転職活動というと、まず転職エージェントに登録することを思い浮かべる方が多いですが、それよりも大切なのは、前回のアドバイスで触れた『自分の経験の棚卸し』と、今回お話しした『現状の待遇を客観的に振り返ること』です。この振り返りを通じて、職場に求める条件や自身の優先順位を整理することで、より自信を持って次のステップを選択できるようになります。
改めて…
どうして今の職場を辞めたいのでしょうか?
自問し、自分の不満や理由を明確にしましょう。
なぜ、今の職場に就職したのでしょうか?
あなたの過去の選択理由を振り返ることで、自分が何を求めていたのか再確認できます。
最後に
ミキさんのキャリアは、すでにしっかりと積み上げられています。転職活動を進めるにしても、今の職場にとどまるにしても、「経験の棚卸し」と「待遇の再確認」は次のステップに進むための大切な準備です。自分の価値を正しく評価し、納得できる選択をしてくださいね。納得のいく選択が必ずキャリアの次のステップにつながります。応援しています!
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濱田 安岐子さん NPO法人看護職キャリアサポート/株式会社はたらく幸せ研究所 代表 看護師/国家資格キャリアコンサルタント/ハラスメント相談員 看護師臨床11年、看護教員3年を経験した後、2006年からフリーランスとして独立。2010年、NPO法人看護職キャリアサポートを設立し、看護師が元気に自分らしくキャリアを継続できるように活動中。2018年には、株式会社はたらく幸せ研究所を設立。健康と幸福学で幸せに働ける社会を目指している。 | 中林 友美さん フローレンス FP オフィス 代表 看護師/ファイナンシャルプランナー/国家資格キャリアコンサルタント 長らくがん看護に従事し副看護師長を経験後、FPなどの資格を取得。多忙で自分のことをつい後回しにしてしまう看護師が自分らしく輝く人生を歩むために、2019年よりフローレンスFPオフィスを立ち上げ、日々活動中。 |
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