寝たきりによる 褥瘡 (床ずれ)、ストーマ(人工肛門)造設や失禁にともなう皮膚トラブルは、患者さんのQOLに悪影響を及ぼしかねません。皮膚・排泄ケア認定看護師は、病院内はもちろん在宅でもより快適に生活できるよう、ケアや指導を行っています。この資格を生かし、現在は専従の褥瘡管理者を務める雨宮順子さんに、資格取得までの道のり、仕事のやりがいなどについてうかがいました。
資格のチカラ
2025/1
認定看護師は、高度化し専門分化が進む医療の現場において、水準の高い看護を実践できると認められた看護師です。「皮膚・排泄ケア認定看護師」は、 褥瘡 (床ずれ)などの創傷、オストミー、失禁看護の分野でアセスメントおよび適切なケアを行います。さらに、医師や看護師から相談を受け、ケア方法について指導したり、患者さんやその家族にセルフケアを指導したりする役割もあります。
資格取得年月:2012年7月
独立行政法人 国立病院機構 東京病院
⽪膚・排泄ケア認定看護師/副看護師長
寝たきりによる 褥瘡 (床ずれ)、ストーマ(人工肛門)造設や失禁にともなう皮膚トラブルは、患者さんのQOLに悪影響を及ぼしかねません。皮膚・排泄ケア認定看護師は、病院内はもちろん在宅でもより快適に生活できるよう、ケアや指導を行っています。この資格を生かし、現在は専従の褥瘡管理者を務める雨宮順子さんに、資格取得までの道のり、仕事のやりがいなどについてうかがいました。
雨宮さんの看護師としてのご経歴を教えてください。
2004年に東京病院に入職し、消化器外科病棟で7年弱勤務しました。その後、神経内科病棟に配属。2011年に皮膚・排泄ケア認定看護師になるため、看護研修学校に入学しました。資格取得後、2013年からは専従の褥瘡管理者を務めています。
褥瘡管理者は、どんな仕事をするのでしょうか。
各病棟から皮膚・排泄に関する相談を受け、ケアを実践・指導する仕事です。また、当院では看護師による専門外来として週1日ストーマ外来を開いているため、人工肛門の患者さんに対するケアや生活支援も行っています。私は褥瘡管理の仕事に専念する“専従”ですが、普段は病棟で仕事をしながら、週に一度、皮膚・排泄ケア認定看護師の仕事を行う“専任”の看護師もいます。
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格を取ろうと思ったきっかけを教えてください。
入職4年目に、消化器外科でストーマ外来を開設されることになりました。そもそも当院はストーマ造設の手術件数がそれほど多くなく、ストーマのトラブルに対応できる看護師がいませんでした。そこで、皮膚・排泄ケア認定看護師の資格を持つ看護研修学校の教員をお招きし、私がサポートすることになったのです。
患者さんは、ストーマの周りに装具を貼り付けて排泄物を溜めます。ですが、患者さんによってストーマの造設場所や形状、排泄物の状態が異なるため、一人ひとりに合った装具を選ばなければなりません。当時の私は知識や経験が十分とは言えず、適切な装具を選ぶことができていませんでした。
そんな中、皮膚・排泄ケア認定看護師の介入により、装具の選択やアセスメントがスムーズに。皮膚がただれた患者さんが、認定看護師のケアでみるみるうちに改善していく様子を見て、私も資格取得を意識するようになりました。
そこから資格取得に向けて、すぐに動き出したのでしょうか。
いいえ、資格を取得したいという意向を示していたものの、神経内科に異動になってしまいました。しかも異動直前に結婚し、子どもを妊娠。とはいえ、このまま認定看護師への道を諦めるのは悔しいので、妊娠7ヵ月で研修学校を受験して入学し、産後まもなく資格取得に向けて勉強することにしました。
専従の褥瘡管理者として、各病棟の皮膚・排泄ケアの実践と指導を行う雨宮さん
資格を取得するには、教育機関で約1年にわたって教育を受ける必要があります。どんな勉強をしましたか?
座学、グループワーク、実習がありました。グループワークでは、適切なストーマ装具選択や学会で得た最新情報について他の受講生とディスカッションし、レポートをまとめました。実習では、実際に病院に赴き、皮膚・排泄ケアに関する相談を受け、コンサルテーションを行いました。また、褥瘡のある方、ストーマ造設手術をする方、失禁により皮膚トラブルのある方を受け持ち、ケアや指導を行う実習も。認定看護師が行なう相談・実践・指導をひと通り経験しました。
現在の認定看護師教育は、A課程と特定行為研修を含むB課程があります※が、私が学んでいたころはまだA課程しかありませんでした。そのため、2020年に創傷の壊死組織の除去、陰圧閉鎖療法など、特定行為研修も追加で行いました。
※A課程認定看護教育は2026年度で終了。A課程認定看護師は、特定行為研修を修了することでB課程認定看護師へ移行することが可能。
資格取得のための勉強で、特に大変だったことは?
グループワークが多く、資料整理やディスカッション、レポート作成は深夜に及ぶことも。私は乳児を抱えていたため、他の受講生に自宅に来ていただき、子どもを寝かしつけてからみんなでグループワークに取り組んだこともありました。私の自宅が研修学校に近かったからできたことですが、他の受講生や先生方に大いに助けられました。
育児と勉強をどのように両立させたのでしょうか。
研修学校の敷地内にある保育園に子どもを預け、講義が終わったら迎えにいき、課題が終わらない時は夫の手を借りていました。帰宅後は食事をして、子どもを寝かしつけ、深夜1時ごろに起きてレポートを作成。乳児の間はまだラクだったのですが、離乳食の時期は、食べ物をすり潰したり、保育園で食事をするための事前アレルギー食品チェックをするので大変でした。しかも保育園のPTA会長になり、バザーや餅つきなどの活動も主体的に行うことに。とにかく目まぐるしい日々でした。
学校に通う間、お仕事はどうしていましたか?
約半年間、出張扱いになり職務として学校に通いました。入学金や授業料、教材費は自己負担でしたが、特定行為研修を受ける時には職員キャリア支援制度で一部の費用を負担してもらえる研修制度を利用しました。
ストーマ外来の担当医師との申し送りの様子。和やかな雰囲気が伝わる
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「忙しい日々を乗り切るために、いい香りのハンドクリームを気分によって使い分けたり、かわいい付箋やスタンプでテンションを上げたりしていました。スタンプは、今も後輩からの提出書類に捺すなど活用しています」(雨宮さん)
資格主催団体名: | 日本看護協会 |
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資格種類: | 日本看護協会 資格認定制度 |
受験資格: | 1~3の項目をすべて満たしていること。 1.日本国の看護師免許を有すること。 2.看護師免許を取得後、通算5年以上の実務研修を受けており、そのうち通算3年以上は特定の認定看護分野における実務研修であること。 3.A課程認定看護師教育機関若しくはB課程認定看護師教育機関叉は外国においてそれらと同等と認められる教育を修了していること。 |
ホームページ: | 日本看護協会 認定看護師 |
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