【共創】東京科学大学病院様×ケアコム 「通院される方のための転倒予防ワンポイント」
2025/2/14
私たちの働き方改革
2025/5
湯野
診療材料管理の標準化は、想像以上にさまざまな効果がありました。最も大きな効果は、材料を探す時間が短縮したことです。標準化の前後で、自部署と他部署、それぞれの看護師が検尿コップを探す時間を計測してみたところ、自部署の看護師は17秒から3秒に短縮。大きな効果が出たのは他部署の看護師で、48秒から5秒にまで時間が短縮しました。
吉田
異動先や応援先でも、問題なく材料を探せるようになりました。外来の各診療科ではポリバレントナースが活躍しているので、診療材料管理の標準化は本当にありがたい取り組みでした。
山口
新人看護師や外国人の看護補助者からは、イラストのおかげで材料を探せるようになったと聞きました。新人で材料をまだ覚えていなかったり、外国の方であれば日本語が読めなくても絵があることでイメージができるようになったそうです。
湯野
材料の収納場所をすぐに見つけられるので、いろんな引き出しを開ける必要がなくなり、課題でもあった接触感染の危険性も低くなりました。
また、在庫整理ができたこともよかったですね。取り組み中、古い材料が出てきて驚いたこともありました(笑)。いろんな病院さんから聞きますが看護師はストックが大好きな傾向があるので、不要な在庫を抱えがち。ですが、取り組みを機に診療材料の定数を見直すことができ、適正な在庫数で管理ができるようになりました。これにより、物品購入費用の削減にもつながりましたから、経営面でもよい効果を得られたと思います。
興味深かったのは、物品管理センターからも好評を得たことでした。当センターは週に2回、各病棟の診療材料の補充を行っています。以前は病棟によって材料の収納場所がバラバラで、特に新人職員が場所を覚えるのがかなり大変だったそうです。物品管理センターの職員からは「置き場所の統一化により、新人スタッフへの補充指導もしやすくなった」「定数削減により棚の上にはみ出していた材料が引き出しにスッキリ収まった」などの声が聞かれました。同じ目標に向かって変革を推進し、双方の満足度が向上したことで、物品管理センターとの信頼関係が深まり、相談や依頼がしやすい関係を築くことができました。
それから、看護師の思考が「診療材料を早く準備するにはどうしたらよいか」に変わり、自発的に行動を起こすようになったこともうれしい変化でした。各部署で緊急時に対応しなければならない処置や、頻回に実施する検査に必要な診療材料のセット化を物品管理センターと協働して行うようになったのです。例えば、心筋梗塞の対応時に必要な材料が一式そろっている「心筋梗塞セット」をつくったり、血液内科病の患者さんが多い病棟の看護師が「骨髄穿刺セット」をつくったりしています。こうした取り組みは、物品管理センターへ相談しやすくなったことも後押しになっていると思います。いろんな成果がつながって、新たな変革を生んでいく。とてもいい循環ができあがってきたと感じています。
▲材料室の様子。色分けされていることで遠目からでも、どの材料がどの引き出しに入っているのかがわかりやすい。多数の病院が見学に訪れ診療材料管理の参考にしている
湯野
今回の取り組みが成功したポイントは、推進チームに主任だけでなく、副師長にも参加してもらった点だと思います。取り組みは現場にいかに浸透させるかが重要です。実際、取り組みで影響を受けるのは現場ですからね。主任だけでは現場をうまくハンドリングできず、大変だった部署もあったようです。副師長と主任が協働して取り組むことで看護師の「表示・配置の標準化をする」ことへの意識が高まりました。
また、危機感を共有したこともとても効果的だったと思います。診療材料管理の現状をデータで可視化したことで、「この危機をなんとかしなければ」という意識改革にもつながったと感じます。
診療材料管理の標準化に加えて、当院ではセル看護提供方式Ⓡの導入や記録改革など、さまざまな取り組みを同時並行で進めています。各取り組みの効果があわさり、以前に比べ看護師の働き方は大きく変わりました。患者さんとの対話時間も増えましたし、超過勤務時間が半減しました。
実際、看護師のワーク・ライフ・バランスも整ってきました。家族との時間やリラックスタイムが増えた、早めの就寝ができるようになり心身のリフレッシュにつながっているという声も聞こえてくるようになりました。視察研修に来られた方から「看護師の皆さんがキラキラしていて、本当に元気ですね」とおっしゃってくださり、それもうれしいですね。
診療材料管理を通して、看護部全体で成功体験を得ることができました。これをバネに、予算をうまく獲得しながらAIの活用や看護管理者の働き方改革、夜勤の負担軽減など、看護師のよりよい働き方のために、さらなる改革を進めていきたいです。
撮影:遠藤 麻美/一部画像提供:小松市民病院 看護部さま
施設名: | 国民健康保険 小松市民病院 |
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住所: | 住所:〒923-8560 ⽯川県⼩松市向本折町ホ60番地 |
開設: | 1950年11月 |
定員数: | 340床 ※2025年4月時点 |
ホームページ: | https://hosp.komatsu.ishikawa.jp/index.html |
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