妊婦への情報配信と予約管理のICT化で 看護師と妊婦双方の利便性が向上
2024/4/30
私たちの働き方改革
2023/8
<お話してくれた方>
左から
法人本部 運営管理部 部長 中野 葉月さん
法人本部 経営企画部 主任・看護師 斉藤 玲夏さん
在宅医療課 看護師長 鈴木 志津子さん
診療部 部長 中澤 由佳里さん
診療アシスタント(MSW) 古城 ふたばさん
埼玉県所沢市を中心に首都圏17の地域に拠点を置くわかさクリニックは、地域密着型の総合クリニックとして、365日無休・24時間体制で外来診察と在宅医療を提供しています。在宅医療のニーズの高まりを背景に、同院は訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などとの連携強化に取り組むかたわら、抜本的な業務改善に取り組み、課題であった職員の超過勤務の大幅削減を実現しました。業務改善に至った経緯やその成果、それを可能とした同院のチームワークについて、お話をうかがいました。
中澤
わかさクリニックは、「信頼」「やさしさと思いやり」「成長」を理念に掲げ、スタッフ全員でホスピタリティの向上に日々取り組んでいます。当院では外来診療と在宅医療の他に美容サービスも提供していますが、こうした新しいサービスなどを積極的に取り入れていくためにみんなで学び、成長することを大切にしています。
鈴木
在宅医療の看護師の役割には、訪問診療の帯同の他、医師のスケジュール調整、患者さんやそのご家族、ケアマネージャー、訪問看護師、ご入居施設との連絡調整などがあります。当院は看護師が6名、看護補助業務を行うMSW(メディカル・ソーシャル・ワーカー)が6名おり、それぞれが医師とともに患者さんのご自宅や市内の高齢者施設を訪問診療しています。患者さんの中には、がん患者さんや終末期の患者さんも多くいらっしゃいます。
古城
私はMSWとして訪問診療のスケジュール調整などを担当しています。施設の規模は大小さまざまで、多いところでは50名規模になります。居宅と施設の患者さんの訪問を組み合わせて、各組1日最大14、15件ほど回ってもらっています。
鈴木
このような少人数で毎日の業務にあたる中、課題となっていたのが、超過勤務の多さです。看護師は、朝出発する前に患者さん全員分のカルテや処方箋の準備をし、診療から戻ってきたら約30~40名分という膨大な数の記録をパソコンに入力していました。その結果、毎日2時間ほどの超過勤務が発生していたのです。
中野
現在、当院の在宅患者さんは約1,100名と、総合病院並みの数にのぼります。看護師の数も十分ではない中、コロナ感染拡大で患者さんの数が急増し、従来のやり方では対応しきれなくなっていました。私は、とにかくみんなに効率よく仕事してもらいたいと思い、みんなと相談しながら、試行錯誤で新しいツールを導入し、さまざまな改善策を講じてきました。その一つが、電子カルテの刷新です。
▲働き方改革を推進する運営管理部部長の中野さん
中澤
以前に当院で使用していた電子カルテは、大学病院などで使われている仕様のためデータ量が大きく、処理速度も遅いものでした。そのため当日診察した分の記録と、終末期や容体の経過に注視が必要な患者さんの申し送り記録、翌日の準備分と、それぞれ別のパソコンで入力作業をしなければなりませんでした。施設訪問のように膨大な数の入力が必要なときには、どのパソコンにどこまで入力したのかとても覚えきれません。
古城
山域への訪問では外出中にWi-fiが切れてしまうことも多く、その場でカルテに記録ができませんでした。そのため、クリニックに戻ってきてから入力せねばならず、大きなタイムロスになっていました。
中野
機動性に欠ける以前の電子カルテに代わって、出先でもスピーディかつ簡単に記録し情報共有できること、それから運用コストを考慮して、在宅医療専用の電子カルテを導入することにしました。
▲診療部部長の中澤さん
鈴木
新しい電子カルテが導入されて、それまで院内のパソコンや携帯用タブレット端末など別々のデバイスに入力していた訪問看護指示書や診療情報提供書などの情報を携帯用タブレット端末に集約できるようになりました。さらに、FAXも同端末から送れるようになったのです。データが軽量化されたことで移動中にすべての記録作業を済ませることができるようになり、クリニックに戻ってからの作業時間が短縮され、超過勤務が大幅に減りました。
また、以前のシステムでは当日分のデータ入力は当日しかできなかったため、訪問前の朝は常に処方箋を出力する作業に追われていました。それが新しいシステムでは、訪問予定分のカルテを事前に準備できるようになったので、作業効率のメリットは大きかったです。
斉藤
朝は患者さんの連絡対応も多いため、慌てて準備をすると見落としが生じがちです。余裕をもって準備できるようになって、そうしたミスの不安もなくなり、患者さんの情報を把握する時間が増えたと思います。また、施設の訪問診療には薬剤師さんにも同行してもらっているので、処方箋の書き換えや薬のお渡しがその場でできるようになり、患者さんにも大変喜んでいただけています。
古城
処方箋データも、以前は電子カルテからレセコン(診療報酬明細を作成するコンピュータシステム)を経由して出力していたため時間を要しました。しかし、いまは電子カルテから直接、クリック数回で施設の患者さん全員分のデータが出せるようになったので、作業時間もかなり短縮しました。
斉藤
そのような新しい機能も、若いスタッフが「こうするともっと便利」と提案してくれるんです。操作でわからないことがあってもみんなですぐに解決できるので、新しいツールの導入に対する抵抗はありませんでした。
次のページ:チャット機能の活用で職員間の情報共有にも変化が
施設名: | わかさクリニック |
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住所: | 〒359-1151 埼玉県所沢市若狭4 –2468–31 |
開設: | 2000年 |
事業内容: | 外来診療(総合診療科、内科、外科、皮膚科、整形外科、循環器内科、消化器内科、神経内科、泌尿器科、がん治療・緩和ケア科、内視鏡・MRI・各種検査、禁煙外来、痛風外来、睡眠時無呼吸症候群外来、ボツリヌス治療外来、褥瘡(床ずれ)外来、AGA(男性型脱毛症)外来、花粉症外来、物理療法・リハビリ、美容皮膚科)、在宅医療、オンライン診療 |
ホームページ: | https://wakasaclinic.com/ |
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