私たちの働き方改革

2023/8

電子カルテの見直しで超過勤務を大幅削減 在宅医療チームの組織力向上へ

電子カルテの見直しで超過勤務を大幅削減 在宅医療チームの組織力向上へ

チャット連携で患者情報の伝達漏れを防ぐ

中野

記録業務の効率化とともに見直したのが、職員間の情報共有の方法です。以前は電子カルテとは別のチャットツールを利用していましたが、チャット機能が搭載された電子カルテにし、情報共有を一ヵ所に集約するようシフトしました。

鈴木

日々の業務連絡や患者さんの症状の伝達の他、訪問診療の依頼が入った際にチャットで連絡します。メンション機能を使うことで特定の医師に診察の依頼を送れて、それがきちんと確認されたかがわかるようになったので、とても便利です。訪問中の医師に確認すべきことも多いため、スピーディに返事がもらえるようになり、医師が確認できるタイミングを待つという時間ロスも減りました。

斉藤

非常勤の医師の場合は特に、患者さんの検査結果や翌日以降に持ち越す伝達事項などの連絡が診療後に途切れてしまって、あとから確認が取りにくい状況がありました。また担当看護師が替わるときなども、医師と受け取り側の間で指示内容に認識のズレが生じたり、対応数が多くて伝達漏れが生じたりもしていました。

中澤

伝達漏れを防ぐために、スプレッドシート(表計算ソフト)も活用しています。当院は24時間・365日無休のため、電話対応の数が本当に多く、コンタクトセンターでまず診察依頼のご連絡を受け、看護師が折り返しの電話をしています。患者さんの情報や症状を事前にきちんと把握したうえでお話できるように、最初の電話対応時にスプレッドシートにヒアリングした全ての情報を記入してもらっています。

鈴木

医師もその情報を確認する流れになっています。院内のホワイトボードなども活用しながら、緊急の患者さんの情報も全て共有できるようにしたことで、伝達ミスはなくなりました。

斉藤

以前は診療の依頼が入ると、電話でスタッフの居場所やスケジュールを確認する必要がありました。でも、電子カルテ内のチャットやカレンダー機能で全員の動きがリアルタイムで把握できるようになったので、「次の往診依頼はこちらに来るかな」といった予測もできるようになりました。時系列で情報を追えるので、誰が見ても理解できるように入力することをより意識するようになりました。

whitebourd▲ホワイトボードなどで緊急の患者さん情報などをスタッフ全員に周知

職種の垣根を取り払い、チーム全員で学び合う環境に

中澤

電子カルテの刷新に加えて、約1年半前に常勤の在宅診療専任の医師が入職したことで、部内のコミュニケーションも大きく変わりました。それまで医師は在宅診療と外来の掛け持ちで多忙を極めていたため、医師に質問することへの遠慮があるほどでした。しかし今は先生が中心となって、毎日の朝と夕方のミーティングなどを通し、一人の患者さんについてみんなで話し合う場を多くつくれるようになりました。

鈴木

看護部のミーティングに医師が参加するのは珍しいと思います。看護師や事務職もバラバラに動くところが一般的に多いと思いますが、毎日の些細な共有事項を全員一緒に確認できるようになり、職種関係なくみんなが同じ方向に向かって取り組めていることを実感しています。患者さんからのさまざまなご意見についても、いただいたその日のうちに話し合って対応するようにしています。

斉藤

チーム連携は、コミュニケーションに尽きると思います。それには「看護師でないとわからない」といった先入観を捨てることも大切です。訪問診療の際には、帯同してくれるMSWのスタッフたちから看護師とは違う目線で改善点を見つけてもらうこともあるので、意見や感想を聞くことを大切にしています。

中澤

この仕事は自院のスタッフのみならず外部の訪問看護師、ケアマネージャー、薬剤師などとの連携によって成り立っています。最近では、そのつながりをもっと大切にしようということで、電話を受ける際には「お電話ありがとうございます」と一言添えるなど、感謝の気持ちを込めて接することにも力を入れています。こうした小さな改善策もミーティングで話し合い、対応一つひとつの質を上げるよう全員で取り組んでいます。

中野

今後の課題として挙げているのは、看護助手など幅広い業務に携わっているMSWの給与などの労働条件の向上です。また、女性が多い職場のため、ライフスタイルの変化に影響を受けやすい女性たちが長く働き続けられる環境づくりを常に意識しています。みんなと力を合わせて、これからも日本一の在宅医療を提供することを目指します。

tasyokusyukaigi▲患者さんについて話し合う時間が充実してきた。医師も含め、みんなで意見を出し合っている(写真提供:わかさクリニック)

写真:遠藤麻美

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施設名:わかさクリニック
住所:〒359-1151 埼玉県所沢市若狭4 –2468–31
開設:2000年
事業内容:外来診療(総合診療科、内科、外科、皮膚科、整形外科、循環器内科、消化器内科、神経内科、泌尿器科、がん治療・緩和ケア科、内視鏡・MRI・各種検査、禁煙外来、痛風外来、睡眠時無呼吸症候群外来、ボツリヌス治療外来、褥瘡(床ずれ)外来、AGA(男性型脱毛症)外来、花粉症外来、物理療法・リハビリ、美容皮膚科)、在宅医療、オンライン診療
ホームページ:https://wakasaclinic.com/

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