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2025/3

おしえて、先輩! 看護師のためのマネー&キャリア相談室#06「老後資金の準備」

おしえて、先輩! 看護師のためのマネー&キャリア相談室#06「老後資金の準備」

この先、私はどんなキャリアを歩んでいくのだろう。将来のことを考えると、仕事だけじゃなく、お金の計画もきちんと立てなくては。でもこれ、誰に相談すればいいのかわからない……。

そんな看護師の皆さんのお悩みに、看護師の先輩であり、現在それぞれキャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナーとして活躍されている濱田安岐子さんと中林友美さんがズバリお答えします。第6回は、前回に引き続き、30代半ばに差し掛かったクリニック勤めのカナさんからのご相談です。老後に向けてのお金の準備をそろそろ考え始めているようです。

「老後資金の準備、何から始めたらいいのかわからない…」

看護師・カナさん(35歳・クリニック勤務10年目)のお悩み

30代半ばに突入し、老後の資金や定年後の生活について考えることが増えました。周りの友人もNISAやiDeCoなどの資産運用を始めたりしていますが、私はまだその違いがよくわかっていません。老後資金の準備は、何から始めたらいいのでしょうか。

老後資金の準備は「木を育てること」と同じ!

中林さんのアドバイス

カナさんは30代で老後資金について考えているのですね! とても素晴らしいです。
老後資金の準備は、「木を育てること」に似ています。最初は小さな苗木でも、時間をかけて育てることで、大きく成長し、やがて果実をつけるようになります。投資も同じで、焦らずじっくりと長期的に育てることが大切です。

しかし、急な出費や収入の減少でお金が必要になったときに、成長途中の木を切り倒すように、増えている途中の投資のお金を崩してしまうと、本来得られるはずだった利益を失ってしまうことになりかねません。
だからこそ、まずは「投資を崩さずに済む安心資金」=生活防衛資金を確保することが大切です。

【生活防衛資金の目安】

  • 看護師はもともと再就職がしやすく正社員であれば解雇リスクが低いため、一般的に3カ月分の生活費があれば十分な場合が多い
  • 看護師でもフリーランスや非常勤で働いている人、家庭を支える立場の人、転職までに時間がかかる可能性がある人は6カ月分以上の生活費があると安心

 

「いくらあれば安心できるか?」を基準に、自分に合った金額を考えましょう。

NISAとiDeCo、それぞれの特徴を知ろう

生活防衛資金を確保できたら、次に考えるのは「将来のお金をどう増やすか」です。そのために役立つのが、国の制度で税制優遇を受けながら長期的に資産を増やせる仕組み「NISA(ニーサ)」と 「iDeCo(イデコ)」です。

NISA (少額投資非課税制度/金融庁管轄)

iDeCo (個人型確定拠出年金/厚生労働省管轄)

    • 運用益が非課税(通常かかる約20%の税金を払わなくてよい)
    • 非課税保有期間が無制限で恒久化
    • 年間投資枠:つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円
    • 非課税保有限度額:1800万円(成長投資枠1200万円含む)
    • 対象年齢:18歳以上
    • 途中で引き出し可能
    • 掛け金が全額所得控除(所得税・住民税の節税メリット大)
    • 運用益が非課税(NISAと同じ)
    • 受取時の税制優遇(退職所得控除 or 公的年金等控除)
    • 掛け金の上限は厚生年金加入か国民年金加入かなどで異なる(厚生年金加入者は月2.3万円、国民年金加入者は月6.8万円など)
    • 対象年齢:原則20歳以上~65歳未満(厚生年金に加入している場合は18歳から可能)
    • 60歳まで原則引き出し不可(老後資金専用口座)

 

 

iDeCoとNISAの比較:どれを選ぶ?

  • 「老後資金をしっかり準備したい」なら iDeCo!(60歳以降に引き出し可能。毎年節税できてメリット大)
  • 「老後だけでなく、中長期的に自由に使える資産を増やしたい」なら NISA!(途中で引き出し可能)
  • 両方活用すれば、老後の安心+選択肢が広がる!(まずは少額からスタート)

厚生労働省「iDeCoの概要より

カナさんのように転職経験があり、クリニック勤務(夜勤がなく休日も固定で安定しているが、昇給の機会が少なく退職金にあまり期待できないことが多い)のような方は両方活用するのがおすすめです!ぜひ検討してみてくださいね。

まずは少額から始めてみよう

「投資は難しそう」と感じるかもしれませんが、最初は月5,000円~1万円の少額からでOK! 少額投資ならリスクを抑えながら経験を積めるので、初心者でも安心してスタートできます。例えば、NISAで月1万円を年利5%で20年間運用すると、元本は240万円ですが、運用益を含めると約411万円になる可能性があります。時間を味方につけることで、少額からでも大きな資産へと育てることができます。
(参考:金融庁「NISAつみたてシミュレーター

また、iDeCoの場合、例えば年収500万円の方が毎月2万円を積み立てると、年間で約4.8万円節税できます(所得税率10%、住民税率10%の場合。年収と税率により異なります)。自分自身のために拠出したお金なのに、全額控除されるという驚きの制度です。
(参考:iDeCo公式サイト「簡単税制優遇シミュレーター」

まずは、生活防衛資金を確保し、そのうえで金融機関の口座を調べて、NISAやiDeCoの内容をチェックしてみましょう。おすすめは手数料が安いネット証券ですが、何社もあるので取扱商品の充実度、アプリやサイトの使いやすさを比べてみましょう。以下のサイトを参考にしてみてくださいね。

【NISA】 金融庁 NISA特設ウェブサイト新NISAナビ

【iDeCo】 厚生労働省「iDeCoの概要」iDeCo公式サイト

まとめ:「時間を味方につける投資」

老後資金の準備は、早く始めるほど有利になります。まずは以下のリストを参考に、長期的に資産を増やすために制度を理解し、口座開設をしていきましょう。

やることリスト

□ 生活防衛資金を確保(3~6カ月分の生活費)
□ NISA・iDeCoの違いを理解し、自分に合った方法を選ぶ! (どちらも活用すると、老後+中長期の資産形成がバランスよくできるので、看護師には特におすすめ)
□ 複数の金融機関を比較し、NISA・iDeCoの詳細と商品ラインナップをチェック!
□ NISA・iDeCo口座の開設申し込み(NISAもiDeCoも税制優遇がある国の制度なので申請に時間がかかることに注意)
□ 月5,000円~1万円の少額投資から始め、余裕があれば増額も検討し、できるだけ長く続けましょう!(苗木を育てていくイメージ)

将来の自分が安心できるよう、今日からできることを一歩ずつ始めていきましょう! 応援しています!

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濱田 安岐子さん
NPO法人看護職キャリアサポート/株式会社はたらく幸せ研究所 代表
看護師/国家資格キャリアコンサルタント/ハラスメント相談員

看護師臨床11年、看護教員3年を経験した後、2006年からフリーランスとして独立。2010年、NPO法人看護職キャリアサポートを設立し、看護師が元気に自分らしくキャリアを継続できるように活動中。2018年には、株式会社はたらく幸せ研究所を設立。健康と幸福学で幸せに働ける社会を目指している。
中林 友美さん
フローレンス FP オフィス 代表
看護師/ファイナンシャルプランナー/国家資格キャリアコンサルタント

長らくがん看護に従事し副看護師長を経験後、FPなどの資格を取得。多忙で自分のことをつい後回しにしてしまう看護師が自分らしく輝く人生を歩むために、2019年よりフローレンスFPオフィスを立ち上げ、日々活動中。

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