みんなの広場

2025/2

小林光恵さんの おやすみコラム #028「名前のない食事会」

小林光恵さんの おやすみコラム #028「名前のない食事会」

看護師の友人Aさんは、年に一度、ある決まった5人で食事会をしており、その会の名前がなかなか決まらないとのこと。名前がなくても問題ないのでは? と内心思いながら、どんなメンバーのどんな会なのか尋ねましたが、Aさんは口ごもったままでした。

その話をすっかり忘れていた先日、久しぶりにAさんから長文のメールが届きました。
要約すると……。
14年前、彼女は勤務する病院で緩和ケア病棟の開設準備メンバーとなった。はじめは、それぞれの配属部署での勤務後に集まっては検討を繰り返し、その後はメンバー全員が新設病棟の配属となり、準備のみに徹することになった。
物品の準備やら調度品のチェンジやら、とにかくやることが多くアクシデントもいろいろあったが、メンバーで助け合って開設にこぎつけた。
その泣き笑いのめくるめく日々は、たいへんだけど、ものすごく楽しかった。特別な絆が生まれたメンバー全員が新設病棟の配属となったこともうれしかった。
そして、いよいよ新病棟がスタートした矢先、メンバーの一人の看護師Bさんが急逝。

Aさんの文章はこう続きました。
「私たち、この会の名前を決めようという話になると、みな絶句してしまって。でも、会を続けていくために名前は必要だとみな思っていて……。
このあいだ、Bの13回忌で、いつもの食事会をしたのですが、これまでの時間と12回の食事会が私たちには必要だったのだと思います。やっと会の名前が決まりました。小林さんが以前、喪失した人それぞれに必要なことと時間は違うのだと思うと話していたので、このことを伝えたかったんです」
どんな名前になったかはあえて聞きませんでした。

著者/小林 光恵さん
元看護師。著述業。つくば市在住。
エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。

看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。

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(Aナーシング 日経メディカル)
●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」
(Will Friends 日本看護学校協議会共済会)
●ドクターズコラム
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など

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