みんなの広場

2025/7

【レポート】「ナースまつり2025」で、DX化が進んだ“未来の看護現場”をのぞき見!

【レポート】「ナースまつり2025」で、DX化が進んだ“未来の看護現場”をのぞき見!

看護師向けオンラインコミュニティー「ナースライフバランス研究室」によって、看護師・看護学生を対象としたフェス「ナースまつり2025」が開催されました。716日(水)から18日(金)の3日間、「看護の未来、無限大!〜新たな一歩を踏み出すあなたへ〜」というテーマのもと、白衣ファッションショーや看護インフルエンサーによるセミナー、看護師をサポートする企業によるブース出展などが行われました。

Nursing-plaza.comでは、働き方やキャリアアップをキーワードに3つのコンテンツを取材。まずは「看護DXアワード」をレポートします!

2024年に開催したナースまつりのレポートはこちら

ポイントは看護師目線 「看護DXアワード」とは

看護師の業務改善につながるDXソリューションが次々と登場する一方で、「一体、どれを導入すればいいのだろう?」と悩む方も少なくないでしょう。そんな現場の疑問に応えるために、一般社団法人日本男性看護師会が企画したのが「看護DXアワード」です。看護業務をDX化する製品やサービスについて、同会の代表理事である坪田康佑さん、看護DX導入支援を行う株式会社S.U.Nの宮田俊さん、厚生労働省 医政局看護課 課長補佐の経歴を持つ石原美和さんの3名が、看護師視点で審査。ナースまつり2025のステージで表彰式が行われました。

Nursing-plaza.comでは、見事アワードを受賞したDXソリューションの中から、「記録作業の負担」「訪問看護の孤独感」「DX人材不足」の3つの課題を解決してくれるものをピックアップ。DXの力で看護現場の未来がどう変わっていくのか見てみましょう!

今回が初開催ながら、なんと53ものエントリーがあったそう……! 激戦を勝ち抜いただけあり、表彰を受けたソリューションはどれも導入後の未来を想像してわくわくできる革新的なものでした。中には病院発のソリューションもあり、自病院にとどまらず、より多くの施設に導入・活用してもらうことで、看護業界全体のDX化を進めたいという想いが感じられました。

DXの力で作業を効率化し、記録時間の削減を

マイナビによる調査「2024年度版看護師白書」(※)によると、残業中の業務として「看護記録」が55.9%と最も多くの回答を集めています。こうした現状もあってか、アワードでは、記録作業を効率化する製品やサービスが最も多く表彰されていました。

最優秀賞に輝いた、株式会社イノシアが提供する「チームコンパス」もその一つ。看護実践用語標準マスター、看護ナビ、患者状態適応型パスシステム(PCAPS)の3つが組み合わさった看護記録システムです。

看護実践用語標準マスターは、看護業務や看護記録に関する言葉を定義して集めたもの。経験値に関係なく、看護師全員が同じ評価基準・言葉で記録することで、患者さんの経過を正しくアセスメントできるようになります。看護ナビは症状別・疾患別の看護計画です。必要な観察項目とケア項目があらかじめカルテにセットされているので、ケアのばらつきを防ぐことができます。

そしてPCAPSは、患者さんの状態を基軸に展開するパスです。従来のクリニカルパスは時間軸が基準であるため一方向にしか計画を進められないのに対し、PCAPSは現在の患者さんの状態に適したパスが用意されているため、より個別性の高いケアを提供することができます。

これら3つが合わさることで、医療プロセスが可視化され、経験や知識の差にかかわらず一定のケアが提供できるようになります。チームコンパスの導入によって、看護計画を短い時間で立てられるようになり、記録にかかる時間を削減したという事例もあるようです。

坪田さんは患者さんにもDXの効果をもたらす点を評価していました。例えばチームコンパス上で「看護計画情報提供用紙」をつくると、観察・ケアについて患者さんでも理解しやすい用語に変換してくれたり、自動でイラスト化されたりするそう。わかりやすい資料は、患者さんへの説明時間の短縮にもつながるかもしれませんね!

   株式会社イノシアの中尾彰宏医師(左) 受賞コメントが終わると、客席から大きな拍手が送られました 株式会社イノシアの中尾彰宏医師(左) 受賞コメントが終わると、客席から大きな拍手が送られました

また、「生成AI」を活用して看護記録などの文書制作をサポートするソリューションにも賞が贈られました。中でもGen AI(生成AI)賞を受賞した「ユビ―生成AI」は、退院看護サマリーや診療情報提供書の作成サポート、他施設からの紹介状の要約、電子カルテの情報をもとにした診療記録の文書作成などを生成AIが行ってくれるシステムです。すでに導入している施設では、患者説明記録の作成時間が33%減、年間で120時間の削減につながっているそうです。

表彰を受けた「ユビー生成AI」担当者の、「人材不足の解消や業務負荷の軽減はもちろん、患者さんと向き合うケアに注力できるような環境をつくりたい」というコメントが印象的でした。DXソリューションがもたらすのは“自分らしいケアを実現する余白”かもしれないですね。

Nursing-plaza.comでは、スマートフォンを用いて音声入力で記録作業を効率化した施設をご紹介しています。雑務中や移動時間などのスキマ時間に記録を行うことで、残業時間の削減を叶えています。
看護記録の音声入力で業務を効率化 超過勤務を減らし、やりがいのある職場環境に
(聖マリアンナ医科大学病院)
インカム活用による労働環境のDX化で、記録時間の短縮や入居者との時間創出を実現
(セ・シボンかしま)

「2024年度版 看護師白書 看護師の労働実態と就業・転職動向」
閲覧には会員登録が必要です

訪問看護の心理的安全性を高めるハラスメント対策をDXで

一人で患者さんのもとを訪れることが多い訪問看護師。自宅という閉ざされた環境によってハラスメントや暴力などの被害に遭うケースが問題視されています。しかし助けを呼ぶことが難しかったり、患者さんとのその後の関係性が気になって誰にも言えず我慢してしまうこともあるのではないでしょうか。

そうした課題を解決するため、福岡大学を中心に研究開発されたのが、在宅スタッフ連携アプリ「クルサ」です。地域包括ケアシステム版のハリーコール&エマージェンシーコールで、GPSで全スタッフの位置情報が共有されており、緊急時には近くにいるスタッフに支援要請をすることができます。要請後は、支援要請先までのルートナビが表示されたり、救援要請の過程が自動的に記録されるグループチャットが利用できます。

訪問看護の市場規模が拡大していることもあり、訪問看護用の電子カルテや生成AIを使ったルート作成ツールなど、訪問看護に関するソリューションが多く受賞していました。システムによって訪問看護ならではの孤独への不安などがやわらげば、訪問看護ステーションへキャリアチェンジするハードルが少し下がるかもしれませんね。

訪問看護へのキャリアチェンジは「看護師のためのマネー&キャリア相談室」でもご紹介しています。ぜひご覧ください!
看護師のためのマネー&キャリア相談室#07「訪問看護へのキャリアチェンジ」

受賞したソリューションには、坪田さん(左)と宮田さん(右)からオリジナルの表彰状が手渡されます受賞したソリューションには、坪田さん(左)と宮田さん(右)からオリジナルの表彰状が手渡されます

DXソリューションを使いこなせる看護師を増やす

いくら看護業務を効率化するDXソリューションが出てきても、それを使いこなせる人材がいなくては活用には至りません。実際、2024年にナーシングプラザで行った「医療・介護業界のDXに関するアンケート」でも、DX化が進まない理由の第1位が「DXを推進できる人材がいない」、第2位が「専門知識を持った人材がいない」という結果でした。

アワードではエデュケーション賞が用意され、一般社団法人訪問看護支援協会の「看護DX講座」が受賞しました。同団体ではもともと口腔ケアのオンライン講座を提供しており、「どのシステムを導入したらいいのかわからない」「使い方がわからない」といった声をきっかけに、新たにDX講座をはじめたそう。生成AIを使った資料作成の手順などについてオンラインで学ぶことができます。助成金を使って受講することもでき、組織単位で受講すれば、DXリテラシーの足並みも揃うはずです。

訪問看護支援協会の代表の方は20年目のベテラン看護師さん。訪問看護ステーションを経営されていて、ご自身も請求処理やルート作成などに追われる中で、DXの重要性を感じていたそうです。看護師を思う気持ちから、講座を開設してしまう行動力の高さに驚きでした!

一般社団法人訪問看護支援協会はブースも出展。講座とあわせて取り組んでいる、3Dプリンターを使って作った入れ歯などが展示されていました一般社団法人訪問看護支援協会はブースも出展。講座とあわせて取り組んでいる、3Dプリンターを使って作った入れ歯などが展示されていました

DX化でより看護師が生き生きと働く看護現場に向かって、ともに、一歩ずつ

未来の看護師の働き方を知るには、DXは外せない! ということで、取材をした今回のアワード。最優秀賞を獲得したチームコンパスの担当者からは「看護部にDXソリューションを導入するのは決して簡単なことではありません。だからこそ業界全体が一丸になって取り組んでいきましょう」というコメントがありました。終了後には受賞した企業と話をする病院関係者の姿もあり、このアワードが協業のきっかけとなるかもしれません。受賞したソリューションがより多くの病院に導入され、看護師さんがもっといきいきと働く未来が楽しみです。

ナースまつりの様子

ナースまつりの様子。美容、健康など幅広いカテゴリーのブースが展開され多くの看護職を楽しませていました

◎各サービスリンク
チームコンパス
ユビー生成AI
テキスト在宅スタッフ連携アプリ「クルサ」
看護DX講座

Key wordsキーワード

SNSでシェアする