プライマリ・ケア看護師は、少子高齢社会において、地域住民の方々の健康を広く長くサポートする身近な存在として期待されています。2019年7月に日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA)による認定制度が開始してから、認定者の数は65名(2023年6月時点)にのぼります。現在、家庭医療クリニックで看護師長として働く黒田かおりさんに、資格取得の経緯や資格を生かしたスキルアップなどについてお聞きしました。
資格のチカラ
2023/6
プライマリ・ケアとは、小児から高齢者まで、誰もがいつでも何でも相談できる身近な医療を指します。病気のことだけでなくご家族や生活背景まで包括的に診る、地域医療の重要な役割を担っています。プライマリ・ケア看護師はその専門家として、住民の生活を踏まえたアセスメントや健康指導、継続的な疾患管理、近隣医療機関や多職種との連携窓口業務を通して、住民の健康をトータルサポートします。
資格取得年月:2019年10月
たけしファミリークリニック
看護師
プライマリ・ケア看護師は、少子高齢社会において、地域住民の方々の健康を広く長くサポートする身近な存在として期待されています。2019年7月に日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA)による認定制度が開始してから、認定者の数は65名(2023年6月時点)にのぼります。現在、家庭医療クリニックで看護師長として働く黒田かおりさんに、資格取得の経緯や資格を生かしたスキルアップなどについてお聞きしました。
黒田さんとプライマリ・ケアの出会いについて教えてください。
私の看護師としての土台となっているのは、短期大学卒業後に勤めた病院のICUとCCUでの経験です。院内での接触だけでなく、外泊する患者さんをご自宅まで送迎するなど患者さんのご家族と関わる場面が多くありました。ご家族のことを考えながら看護するという、プライマリ・ケアにおける「家族志向のケア」に知らず知らずのうちに関わっていたんです。
本格的にプライマリ・ケアに携わるようになったのは、結婚・出産を経て入職したクリニックでの仕事です。同クリニックは子どもから高齢者まで、内科と外科両方に対応していて、患者さんを取り巻くご家族や地域との連携に力を入れていました。例えば、認知症患者の場合、市役所や民生委員などに見守りのお願いをするということも、私たち看護師の仕事の一つでした。
何がきっかけでプライマリ・ケア看護師の認定を目指すようになったのですか?
2016年にいま勤めているファミリークリニックが開院し、私は看護師長として、それまで自分が現場で学び得たことを新しく入ってきた看護師や事務職員に教える立場となりました。院長からプライマリ・ケア看護師の認定制度が始まることを聞いたのは2年ほど経ったころです。初めはどういう制度なのかよくわかりませんでしたが、「初回だから受かりやすいのでは」と勧められて、軽い気持ちで申し込むことにしました。
認定申請までどのようなプロセスがあったのですか?
認定審査を受けるためには、JPCA主催のeラーニングを27時間以上、医療研修セミナーを9時間以上受講することが必須です。セミナーでは、慢性疾患管理や家族志向のケアなどのテーマに関する座学やグループワークを行います。私が参加したグループワークでは、看護師と患者さんのロールプレイや対処方法に関するディスカッションを行いました。自分ひとりで勉強するのは難しいですが、このような学習機会があったおかげで看護や病気についてもう一度学び、自分の看護観を見直すことができました。他の看護師の方との共同作業を通して、自分にはない発想に触れられたのもよかったです。
研修で学んだことの中で特に印象に残ったことはありますか?
トリアージについては学ぶことが多く、現場の看護師や事務職員にもその重要性を伝えて実践しています。特に事務職員は患者さんと最初に接する立場なので、異常を感じたらすぐに看護師を呼んでもらうようにするなど、トリアージ体制の強化につなげています。
申請の準備や勉強で大変だったことはありますか?
eラーニングと研修セミナーの受講以外に、プライマリ・ケア現場での事例報告書をポートフォリオ形式で書く必要があります。具体的には、実践した内容と結果、それに対する考察を決められた文字数で書きます。認定制度ができて最初の募集だったため手本とするものがなく、ポートフォリオを書いたこともなかったため、とても苦労しました。提出期日まで2か月ほどしかなかったので、仕事後に職場に残って作成を進め、書いたものを院長やほかのプライマリ・ケア医の方々に添削してもらいながら完成させました。
何よりも難しかったのが、現場での実践を看護の言葉を使ってあらためて言語化することでした。でもそうしてアウトプットする中で、自分が行っている看護がプライマリ・ケアとどうつながっているのか気づくことが多かったので、とても有意義なプロセスでした。
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地域の一次医療を担う資格 プライマリ・ケア看護師資格概要
「認定審査に必要なeラーニングの動画は30分から1時間のものまでいろいろ。家事と育児の合間を縫って、時には夫に家事をお願いしながら、視聴する時間をつくりました。最後に見たところから再生できるのは便利です」
◆学習に活用した本◆
『プライマリ・ケア看護学』
編:日本プライマリ・ケア連合学会 出版:南山堂
資格主催団体名: | 日本プライマリ・ケア連合学会 |
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資格種類: | 学会認定 プライマリ・ケア看護師 |
受験資格: | 日本国の看護師免許証を有し、4年以上の臨床経験を持つ、日本プライマリ・ケア連合学会の会員。認定審査を受けるためには、下記1~2の研修が必要。 1.本学会が主催するプライマリ・ケア看護師実践セミナー(eラーニング) 27時間以上 2.本学会が主催する医療研修セミナーなど 9時間以上 |
ホームページ: | 学会認定 プライマリ・ケア看護師について |
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