資格のチカラ

2023/7

家族心理士

家族心理士は、家族問題や家族関係について心理学の視点から専門的なアドバイスやサポートを提供する専門家です。離婚やステップファミリー、介護や子どもの虐待など、家族に関するさまざまな問題に取り組みます。カウンセリングなどを通じて、家族間の問題解決を目指しながら、家族が良好な関係性を築けるよう支援する役割を果たします。

助産師からのキャリアチェンジ 育児と両立しながら取得した家族心理士資格

資格取得年月:2014年4月
神奈川大学 人間科学部 人間科学科
准教授

あそう のりこ麻生 典子

看護師さん・介護士さんは、患者さんだけでなく、そのご家族のケアを求められる場面も多いのではないでしょうか。家族心理士は、心理的な視点からご家族をサポートするエキスパートです。今回は、助産師として働いていた経験から、家族心理士を目指すことになった麻生典子さんを取材。大学で教鞭をとりながら、地域の行政機関で児童虐待や養育困難な家庭への心理的援助を行う麻生さんに、資格取得の経緯や今後の展望などをうかがいました。

助産師から教える立場へ。研究者の視点から、看護の現場をサポートしたい

家族心理士を取得されたことで、スキルアップを実感していますか?

資格取得に向けて勉強したことで、家族心理に関する知識は確実に増えました。一方で、臨床現場で生かせるスキルを向上させるには、臨床経験を積み重ねるしかないと思っています。現在も、児童虐待の現場で出会うご家族と真摯に向き合いながら、家族のニーズに寄り添った支援の在り方を模索しているところです。

スキル以外の面で、何か変化はありましたか?

看護の現場を離れた今、改めて看護職や介護職のお仕事の尊さを実感しています。日々の身体的及び精神的なケアを通して、患者さんやご家族の命と心、人生までも支えることができる仕事ってすばらしいと思いませんか。だからこそ、私は、家族心理士という立場から、看護職・介護職の皆さんにとって、少しでも現場に役立つ知識やスキルをお伝えしたいと思うようになりました。

その一環で、現在助産師さんと一緒に、赤ちゃんとお母さんが心地よいと感じる抱っこの仕方に関する研究を進めています。私も助産師のときは、感覚や経験だけに頼った抱き方をしていましたが、今は、客観的な指標を用いて、わかりやすく一番安定する抱き方を提示することが可能です。心理学の専門的技術や知識を通じて、看護の実践現場のニーズに答えながら、次の世代の子どもたちのために一緒に何かできればよいと思っています。

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家族心理士の資格は、自身のQOLを高めることにもつながる

麻生さんの、今後の目標を教えてください。

家族療法と家族心理学、臨床実践をメインに活動していくという目標は今後も変わりません。私は、複雑な状況下にある家族の心理的援助には、身体的な交流や身体接触が欠かせないと考えています。大学でも、身体接触に関する研究に取り組んでいるところなので、その研究成果を現場での支援にも活用していきたいですね。

最後に、家族心理士の資格取得を検討している読者に向けてメッセージをお願いします。

看護師や介護士の皆さんは、普段の仕事の中でたくさんのご家族の姿を見ていらっしゃいます。その分、資格取得のために学ぶべきことと現場での事例がリンクしやすく、必ず実践にも生かせる資格だと思います。

それ以上に、他者の家族の問題について考え、支援することで、自分自身の生き方や家族との関係にも同時に向き合うことができます。それは、自分の人生を豊かにすることにもつながっていくはずなので、資格を取る・取らないに関わらず、ぜひ多くの方に家族心理学を学んでいただきたいです。

写真:遠藤 麻美

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恩師のサイン入りの著書は、今でも私のバイブルです

「家族心理士の研修課程とは別に、統合的心理療法研究所で家族療法に関する研修を受けていたこともありました。そこで、中釜洋子先生という恩師に出会い、たくさんのことを教えていただきました。中釜先生の著書は今でも私のバイブル。大学で家族心理学を教える際に教科書として大切に使わせていただいています」(麻生さん)

◆学習に活用した本◆
『家族心理学―家族システムの発達と臨床的援助』
著 :中釜洋子・野末武義・布柴靖枝・無藤清子
出版:有斐閣

(画像上) 『家族心理学―家族システムの発達と臨床的援助』
     ※書影は初版のもの。現在は第2版が出版されています。
(画像下) 麻生さんの恩師、中釜先生のサイン入り書籍

取得方法・お問い合わせ

資格主催団体名:一般社団法人 家族心理士・家族相談士資格認定機構
資格制度:機構では、家族心理士・家族心理士補・家族相談士の3つの資格を認定しています。家族心理士はこの3つの資格の中でも上位資格にあたるため、まずは家族相談士の資格取得を目指すのがおすすめです。資格制度の詳細についてはこちら をご確認ください。
家族相談士の受験資格(2023年度版):以下の条件のどれか一つに該当することが必要。条件によって申請書類が異なりますのでご注意ください。
1.「家族相談士養成講座」に登録し、2021年以降に修了を認められた者
2.家族心理学の領域で、研究実績および臨床経験(※1)を有する者
3.家族相談士資格を失効した者。ただし失効して2年以内(資格有効期限が2022年3月31日まで)で再審査を希望する者に限る。

※1 臨床経験とは、教育相談、電話相談、心理臨床、産業カウンセリングケースワークなど、家族カウンセリングに関連のある実践経験が1年以上あることを指します。
家族心理士の受験資格(2023年度版):以下の条件のどれか一つに該当することが必要。
1.家族心理臨床研修センターが実施する「家族心理士研修課程」(2019年度末に閉講)を修了後、1000時間以上の家族援助の臨床経験(※1)がある者。
2.大学院博士前期課程(修士課程)において、家族に関する心理臨床領域における研究により修士号を取得し、かつ1000時間以上の家族援助の臨床経験(※1)がある者。
3.臨床心理士、公認心理師、認定カウンセラー(日本カウンセリング学会認定)、シニア産業カウンセラー(一般社団法人日本産業カウンセラー協会認定)等のいずれかの資格を有し、その資格を取得した後、1年以上かつ1000時間以上の家族援助の臨床経験(※1)がある者。
4.「家族相談士」の資格を取得後、家族に関する心理臨床領域について研究し(※2)、2年以上かつ1000時間以上の家族援助の臨床経験(※1)がある者。
5.上記 1、2、3、4 のいずれかと同等の資格条件を有する者。

※1 家族援助の臨床経験とは、家族療法・家族カウンセリングの理論と方法に基づいた心理臨床的支援と、それについてスーパーヴィジョンを受けた経験があることをいいます。
※2 「家族に関する心理臨床領域について研究」とは、家族心理臨床における独創的なリサーチ論文または事例研究論文等を公表した業績があることを指します。
ホームページ:https://kazokushinrishi.jp/
家族心理士の資格取得方法の詳細についてはこちらをご確認ください。

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