フットケア指導士として、足を重視した看護を実践
普段の業務の中で、フットケア指導士の資格をどのように生かしていますか。
資格取得後から、訪問時には必ず患者さんの足を見せてもらうようにしており、バイタルサイン測定と同じくらい大事にしています。先ほどもお伝えしましたが、足のトラブルを抱えているご高齢の患者さんって、本当にたくさんいらっしゃるんです。でも、そのトラブルをほとんどの方が認知していない。なぜかというと、視力が落ちて足が見えなかったり、背中や腰の痛みで足まで手が届かなかったりと、そもそもトラブルに気づきづらいんですよね。まずはこうした潜在する足のトラブルをすくい上げていきたいと思っています。
「フットケア指導士」という肩書があるのは、やはり大きいです。初対面の看護師から、急に「足を見せてください」と言われたら患者さんもびっくりしますよね。でも、「フットケア指導士なので」とお伝えすることで、その抵抗感を少しは減らせるのではと思います。
また、「足を看る」ことは、患者さんとのコミュニケーションを生む機会にもなります。例えば、「すてきなネイルですね」とか、「たくさんお仕事をされてきたから、りっぱな足なんですね」という会話が、患者さんとの距離を縮めるきっかけになることもあると感じます。
資格を取得されたことで患者さんとの関わり方にも変化が表れていますが、「資格を取得してよかった」と感じた出来事はありますか。
足の痛みを訴えられていた方に、適切なケアができたときはうれしかったですね。その方は、はじめに整形外科を受診し、靴の中敷きの変更を指導されたので変えてみたものの、なかなかよくならなかったそうです。そこで足を見せていただいたところ、重度の外反母趾で、足の裏にタコがあることがわかりました。痛みの大きな原因はこのタコだったので、かかるべきは整形外科ではなく皮膚科であると判断し、受診を勧めました。訪問看護でケアをしており、患者さんの経過も順調です。 これまでのようなふんわりとした支援ではなく、確かな処置を行えたと実感できた出来事でした。
足の健康を守る重要性を伝えていきたい
巻幡さんが考えるフットケア指導士のやりがいを教えてください。
足は、生活を支えるとても大切な体の部位であるにも関わらず、意外と足の疾患やケアについて知らない看護師さんが多いのではないかと思います。実際に私自身も、資格を取得する前は巻き爪の切り方や、静脈疾患の方向けの包帯の巻き方など、足のトラブルに対する正しいケアがわかりませんでした。フットケア指導士は、足の症状に対して適切な判断や処置を行えるようになることで、患者さんのより健やかな生活をサポートできる資格だと思っています。
まさに患者さんの「生活を守る看護」へ通ずる資格でもあると感じます。資格を生かし、今後、巻幡さんが挑戦したいことはありますか。
患者さんのご家族や地域の医療職・介護職向けに、足に関する勉強会などができたらいいなと思っています。もっと足のトラブルは身近なものであることを伝えたいですね。
もう一つ、私が所属している蓮田一心会病院にはフットケア外来があります。現在は外来の方のみ対応していますが、通院が難しい患者さんのために訪問看護の展開も考えています。同じ資格を取得している当院の皮膚・排泄ケア認定看護師と相談しながら、実施に向けて現在計画中です。
資格取得が、新たなチャレンジにつながっているんですね。最後に、これからフットケア指導士の認定を目指す方にメッセージをお願いします。
繰り返しになりますが、「足を看る」ことは本当に大切であると伝えたいです。「足には体のほかのトラブルに気づけるヒントがある」と言われており、医学的な視点においても重要な部位なんです。例えば、タコを繰り返すときは背中や股関節の歪みが考えられますし、足が冷たいときは循環器系の疾患が潜んでいる可能性もあります。足について学ぶことは、患者さんの健康を守ることにもつながるはず。看護師さん、介護士さんどちらも取得できる資格なので、ぜひ興味がある方にはチャレンジしていただけたらと思います!
写真:井上 亮