看護学生を夜間看護助手として活用し、病院の大幅増収や看護師の負担軽減を実現
2023/12/26
私たちの働き方改革
2022/9
新井
数値的な成果として、診療の補助業務のタスクシフトで年間181.9時間の医師の業務時間削減を達成しました。特定行為は、「気管チューブ位置の調整」や「人工呼吸管理がされている患者への鎮静薬の投与量の調整」など計12行為を実践し、トータルで239時間の医師の業務時間削減を実現しました。診療の補助業務と特定行為実践で、合わせて約420時間削減できたことになります。
タスクシフトにより、課題の1つでもあった看護師の医師を待つ時間が減り、約8割の看護師が、取り組み後のアンケートで「タイムリーな処置を患者に提供できた」と回答しています。また、取り組み前に66%あったMDRPUの発生率は、20202年11月時点で16.6%まで減らすことができました。さらに、看護師の超過勤務時間の削減にも効果があり、2018年度には一人あたり3.4時間/月だった超過勤務時間を2020年度には2.0時間/月まで減ったのです。
新井
取り組み開始から約2年、現在も同じく診療補助の3つの業務のタスクシフトと、特定行為を実践していますが、少しずつタスクシフトの幅も広がっています。例えば、動脈ラインポートからの採血は、変わらずラダーを満たした看護師が行っていますが、採血後の血液ガスの測定作業を、ラダーⅠ、Ⅱレベルの看護師に任せています。
小松
血液ガス測定作業をお願いすることになったきっかけは、新型コロナウイルス感染症患者さんの受け入れ人数が増えてきたことでした。採血対応をした看護師が、防護服を脱ぎ隔離室から出て、採血後血液ガス測定に行くことが患者さんから離れなければいけないことや業務効率の悪さにつながっているとの報告もあり、何とかスリム化できないかと考えたのです。
新井
PICUは使用する薬の量も多いですし、病棟が3階にあり、薬剤科がある地下1階まで行って薬の補充をするだけで、長い時には約30分は現場を離れなくてはなりませんでした。管理者にあたる看護師たちにとっては、本当に助かっていると思います。
小松
取り組みを通して、現場のスタッフの意識は確実に向上していると感じます。タスクシフトの実施にはラダーのレベルに達する必要があるため、そのレベルを目指してがんばっているスタッフもいますからね。現場全体のモチベーションアップにも非常に効果的な取り組みだったと感じています。
猪瀬
私は2021年4月にPICUから精神科に異動となったのですが、新井さんと一緒にラダーを作った経験を活かし、精神科の看護師のラダーを作ろうと今動き始めています。PICUのように、すぐにタスクシフトやシェアにつなげることは難しいと思いますが、看護師のモチベーションにつながるのではないかと期待しています。
新井
私は、看護師の「帰宅への意識」も高まったと感じています。看護方式のパートナーシップナーシングシステム(PNS®)の取り組みを始めたことも関わっていると思いますが、一人だけ残って作業をしている人が本当にいなくなりました。
また、先ほど猪瀬さんもお話されていましたが、タスクシフトを叫んでいた当時は、「医師がやる業務だ」という看護師側の意識が強かったんですよね。しかし、ここ最近は、看護師に自信が芽生えてきていることを感じています。「これが患者さんにとってよいことにつながるのだ」ときちんと理解し、行動してくれるスタッフが確実に増えているのです。
この波を機に、どんどん補助業務内容もアップデートし、広げていきたいですね。実際、今も③気管内チューブ固定テープ交換の基準を、取り組みを始めてから約1年が経過したところで、5mmから4.5mmに下げてもらいました。現在はさらに4.5㎜から4㎜に下げられないかと医師と相談しています。これまで通り、無事故で行える方法を模索している状況です。焦らず、ゆっくりでもいいから安全に、先生方との信頼を築きながら、いつか、成人では当たり前に行っている技術を小児でもできるようにすることが目標です。
写真:イイダマサユキ
施設名 | 地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都立小児総合医療センター |
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住所 | 〒183-8561 東京都府中市武蔵台2-8-29 |
開設 | 2010年3月 |
病床数 | 561床(一般347床、結核12床、精神202床) |
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