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2025/2

おしえて、先輩! 看護師のためのマネー&キャリア相談室#05「老後の働き方」

おしえて、先輩! 看護師のためのマネー&キャリア相談室#05「老後の働き方」

この先、私はどんなキャリアを歩んでいくのだろう。将来のことを考えると、仕事だけじゃなく、お金の計画もきちんと立てなくては。でもこれ、誰に相談すればいいのかわからない……。

そんな看護師の皆さんのお悩みに、看護師の先輩であり、現在それぞれキャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナーとして活躍されている濱田安岐子さんと中林友美さんがズバリお答えします。第5回は、30代半ばに差し掛かったクリニック勤めのカナさんからのご相談。老後に向けてのお金と仕事について、悩みを持ち始めているようです。

「老後資金の準備、何から始めたらいいのかわからない…」

看護師・カナさん(35歳・クリニック勤務10年目)のお悩み

 

30代半ばに突入し、老後の資金や定年後の生活について考えることが増えました。周りの友人もNISAやiDeCoなどの資産運用を始めたりしていますが、私はまだその違いがよくわかっていません。老後資金の準備は、何から始めたらいいのでしょうか。

看護活動を通して、どんな自己実現をしたいですか?

濱田さんのアドバイス

同じ組織で10年の勤務経験があるということは、カナさんはチームのリーダーとして活躍している時期でしょうか。働き盛りのあなたが35歳ですでに老後のことを考え始めているということは、自分の人生に向き合っている証拠。早い時期から老後の準備をしようとしているあなたが素晴らしい!

そんなカナさんは、お金のことを知りたいようですが、資金形成については次回登場するファイナンシャルプランナーの中林さんにお任せして、私は働き方について少し情報提供ができたらと思っています。

老後資金の考え方は、世代によっても違いがありますよね。いま中年以上の看護職たちの多くは、若いうちから老後資金を準備する必要がなかった時代背景から、転職を繰り返して退職金を老後の資金として考えることもありませんでした。社会保障制度の中で年金があればなんとかなると信じてきた世代です。いよいよ超高齢社会を迎えるいまの日本においては、年金制度が維持されても支給額が減額される可能性もあるので、不安感も拭えないのですが。

また中年世代の看護職たちは、日本の終身雇用制を知っています。一般企業では長く同じ組織で定年まで勤め上げると、老後の資金に困らないくらいの退職金が出るので、多くの人は、とにかく働き続ける選択をしてきました。ある意味、老後のことを考えて転職しないという選択をしてきた人たちですね。その一方で、看護職は国家資格を武器に転職してもどこでも働けるという強みから、老後の資金については、働いて得られる安定した給与をあてにしている節も。「貯金ができないんだよね~」と悩ましく思いながらも、「少しの貯金さえしておけば大丈夫」「いざとなったら、看護職だから働けばなんとかなる」と思っている人が多いようです。

ただ、定年退職後の看護職のキャリアについてヒアリングするとよく聞くのは、60歳を過ぎてフルタイムで働くのは少しきついということ。さらに、夜勤をすることで一般企業と同じ金額に届くような看護職の給与ですから、パート勤務ではお小遣い程度にしかならないと嘆かれることもあります。しかし、しっかり老後資金を確保してきた人はゆるく働くことを選択しています。定年退職後は徐々に体力が低下してきますよね。お金のことと老後の働き方を一緒に考えておく必要がありそうです。

キャリアデザインを考えるとき、お金がもらえれば何でもいいというよりも、お金に余裕があれば、看護活動を通してどのような自己実現をしたいのか、自分らしく生きるためのデザインができます。定年退職間近になってから「私がお役に立てるところがあるでしょうか?」「私を受け入れてくれるところがあるでしょうか?」という職場探しをしていては、看護職として働くことが苦痛になるばかりで自分らしさは失われていきます。

看護職であれば、老後も働く場はあります。ただ、お金のために働かなければならない状況は苦しいだけです。職場の人間関係や労働条件だけで職場を選んできた人は、同僚が入れ替わったり、雇用条件の変更があったりしたときにその場所で働くモチベーションが失われます。若いうちから自分自身が大事にしていきたい看護活動や、看護職としての自分の価値を感じられる体験、自分の強みを育てること。定年後にチャレンジしたいことなど、長い看護経験を積み重ねながらデザインをしていくこと。それは、お金に余裕があって、自分らしく看護活動をする中でこそできることなのです。

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濱田 安岐子さん
NPO法人看護職キャリアサポート/株式会社はたらく幸せ研究所 代表
看護師/国家資格キャリアコンサルタント/ハラスメント相談員

看護師臨床11年、看護教員3年を経験した後、2006年からフリーランスとして独立。2010年、NPO法人看護職キャリアサポートを設立し、看護師が元気に自分らしくキャリアを継続できるように活動中。2018年には、株式会社はたらく幸せ研究所を設立。健康と幸福学で幸せに働ける社会を目指している。
中林 友美さん
フローレンス FP オフィス 代表
看護師/ファイナンシャルプランナー/国家資格キャリアコンサルタント

長らくがん看護に従事し副看護師長を経験後、FPなどの資格を取得。多忙で自分のことをつい後回しにしてしまう看護師が自分らしく輝く人生を歩むために、2019年よりフローレンスFPオフィスを立ち上げ、日々活動中。

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