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2023/2

小林光恵さんの おやすみコラム #004「大人のがん泣き」

小林光恵さんの おやすみコラム #004「大人のがん泣き」

がん泣き。大泣きのことらしい。
我慢せずに大声を出して泣くような語感。

5歳くらいの頃、日曜日の午後、母が買い物に出かけようとしている時、私も連れてってほしいとよくがん泣きしました。何かを買ってほしいから、ということにしていたけれど、ほんとうは母と一緒にいたかったから。母と離れることを思うとさびしくて悲しくて仕方なかったから。この頃、母の実家によく預けられていたから。
<子どもだったから、清々しいほど、がん泣きができたんだ。大人になってしまうと、そうはできない>と、思っていましたがーーー。

先日、実家の両親がショートステイに。初めての利用のため、準備などの必要があり私は前日から実家に泊まりました。朝となり、両親は無事出発したのですが、10分後に両親をお迎えにきてくれた女性が戻ってきて、びっくり。
<家の鍵を持っていってしまったから、同居ではない娘さんが鍵を締められなくなってしまったのではと心配になって>引き返してくれたとのこと。

あわただしく両親の介護の日々を送っており、この時も、もろもろを早く済ませて自宅に戻って仕事しなければと気が急いていた時で、そしていろいろうまくいかないことが重なってもおり、彼女の気遣いがなんだかとてもありがたくうれしくそして貴くて、掃除していたらにわかに泣けてきて、そしてがん泣きしてしまいました。

でも、ほんとうは、ショートステイ行きの車中の母が少しさびしそうだったことが、なんともせつなくて、それががん泣きの理由だった気がします。世の大人たちも、案外、人知れずがん泣きしているのかも、と思った朝でした。

著者/小林 光恵さん
元看護師。著述業。つくば市在住。
エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。

看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。2023年出版を目標に、ナイチンゲールの子孫が主人公の小説を鋭意執筆中。

<多数のメディアで連載中!>
●小説 『令和のナースマン』
(月刊ナーシング 株式会社Gakken)
●エッセイとイラスト 「アンチヘブリンガン」
(月刊ナーシング 株式会社Gakken)
●コラム 小林光恵の「ほのぼのティータイム」
(Aナーシング 日経メディカル)
●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」
(Will Friends 日本看護学校協議会共済会)
●ドクターズコラム
(健達ねっと メディカル・ケア・サービス)
など

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