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2024/1

小林光恵さんの おやすみコラム #015「難しい言葉かけ」

小林光恵さんの おやすみコラム #015「難しい言葉かけ」

母の死の52日後に父が亡くなりました。老健(介護老人保健施設)に戻るための退院調整が行われている矢先の急変。緊急入院する父に母の死を伝えた22日後のことでした。

母の時にも駆けつけてくれた知人のPさんは、父の告別式後「お母さんが連れて行ったのかな」「お父さんが追って行ったのかな」とつぶやくとうつむき、しばし黙ると、顔をあげて私の顔を見てはっきりと「仲がよかったんだね」と。そして出口へと歩き出すと、立ち止まり、ちらりこちらを振り返ったあと会場をあとにしました。言葉のみならず、言葉が発せられた、その間合いや表情や動作、それら全体から、私の心理を繊細に気づかいながらの彼女のお悔やみの気持ちが伝わってきました。

エンゼルケアの際に、ご家族に「何か言葉をかけなければ」とあせり、咄嗟にかけた言葉について、不安や後悔の念にとらわれている看護・介護職の方からのメールが時々あります。ご家族は言葉を含めた全体を受けとめていると思われるので、思い悩まなくても大丈夫、と返すことが多く、今回はそのことを家族として確認できました。無理に言葉を見出して声かけや言葉かけをしなくても、表情や動作のみでも思いは伝わるのではないか、という考え方もできると思います。

ただ、家族間など気の置けない関係の日常のやりとりでは、表情や動作だけでは思いが伝わらないばかりか、誤解が生まれて喧嘩に発展してしまったりします(目下、経験中)ので、注意が必要ですね。

著者/小林 光恵さん
元看護師。著述業。つくば市在住。
エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。

看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。2023年出版を目標に、ナイチンゲールの子孫が主人公の小説を鋭意執筆中。

<多数のメディアで連載中!>
●小説 『令和のナースマン』
(月刊ナーシングキャンバス 株式会社Gakken)
●エッセイとイラスト 「アンチヘブリンガン」
(月刊ナーシング 株式会社Gakken)
●コラム 小林光恵の「ほのぼのティータイム」
(Aナーシング 日経メディカル)
●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」
(Will Friends 日本看護学校協議会共済会)
●ドクターズコラム
(健達ねっと メディカル・ケア・サービス)
など

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