小林光恵さんの おやすみコラム #011「後輩キャラふたたび」
2023/9/13
みんなの広場
2025/12

友人A(50代の看護職)は、婦人科外来で、はじめて仕切りカーテンのない内診台で診察を受けたそうです。
「あれは患者の羞恥心を和らげる目的だけど、患者は医師の姿が見えず次にどんなことをするのかわからないし、医師側からは患者の様子がわからない。だからかねてから私は仕切りカーテンなしの賛成派なのよ。勤務先の婦人科にも提案したくらい」
私の場合は、医師やナースが十分に声をかけながら進めてくれるなら、あのカーテンがあるほうがありがたく、仕切りカーテンあり・なし、を患者が選択できるのがうれしい、の派です。それを述べようとしたところ……。
「で、聞いてほしいのは、その診察の際の、我ながら意外な私の反応なの。環境への配慮も医師やナースの接し方も素晴らしかったの。なのに、なのに、私、結局、目を閉じてしまったのよ。そして、自分でもコントロールできない私の心が、恥ずかしがって閉じた目蓋をどうしても開けられなかったの。笑えるわよね」
それを聞いて、すっかり忘れていた一つの疑問を思い出しました。
以前看護師として関わった高齢女性Bさんは、食事介助をする際にはぱかっと口を開けて食べ物を受け入れてくれるのに、食後の口内の観察の必要があり口を開けてほしいとお願いすると、いつもすぐには開けてくれず、やっと開けてくれる時には必ず両目蓋をぎゅっと閉じるのでした。しっかり意思疎通のはかれる方なので、目を閉じる訳をたずねたのですが、答えてくれず疑問のままだったのです。彼女は、口内を見られるのがとても恥ずかしかったのかもしれません。いまごろになってBさんの人間味に触れたような感覚になりました。

| 著者/小林 光恵さん | 元看護師。著述業。つくば市在住。 エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。 看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。 <新刊情報 !> 老化にブレーキをかける! 日常でできる運動方法がギュッと詰まったエクササイズ本 『日常動作が安心&快適に!老化防止エクササイズ おうちで簡単カラダづくり』(メイツユニバーサルコンテンツ)が発売中! <多数のメディアで連載中!> ●小説『ナイチンゲール7世』 (イースト・プレス) ●小説 『令和のナースマン』 (月刊ナーシングキャンバス 株式会社Gakken) ●エッセイとイラスト 「アンチヘブリンガン」 (月刊ナーシング 株式会社Gakken) ●コラム 小林光恵の「ほのぼのティータイム」 (Aナーシング 日経メディカル) ●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」 (Will Friends 日本看護学校協議会共済会) ●ドクターズコラム (健達ねっと メディカル・ケア・サービス) など |
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