私たちの働き方改革

2024/2

ロボットの導入と看護師と薬剤師の協働を推進 トヨタ式“カイゼン”で患者さまとの時間を創出

ロボットの導入と看護師と薬剤師の協働を推進 トヨタ式“カイゼン”で患者さまとの時間を創出

ミキシング業務のタスクシフトなどにより120分の業務短縮を実現

柴田

並行して進めたのが、薬剤師が薬剤を集中的に混合調整する「セントラルミキシング方式」の導入です。それまでは、看護師が病棟の注射準備室で点滴する薬剤のミキシングをしていました。ですが、ナースコールが鳴るたびに作業を中断しなければならず、その都度手洗いや確認行為を最初から始めなければなりませんでした。

しかも、旧棟の注射準備室はわずかなスペースでした。ミキシング担当の看護師もいましたが、量が多いため作業が間に合わず、多い時には看護師が7、8人集まって点滴を詰めることもありました。そこを薬局の無菌空間で薬剤師が一括してミキシングすれば、より衛生的に、より安全な薬剤提供ができます。

黒田

そこで、まず平均的な薬剤量を扱う部署で、セントラルミキシングを試行することにしました。目標は1日60分の業務時間削減でしたが、薬材投与までのプロセスがきちんと確立できていなかったため、1日20分の削減にとどまりました。

とはいえ、セントラルミキシングについては、看護師全員が満足していました。そこで、プロセスを見直して2回目の試行をすることにしたのです。

柴田

そこで白羽の矢が立ったのが、当時私が在籍していた消化器センターです。院内でもっとも点滴が多い病棟だったため、1回目の問題点を洗い出し、再チャレンジしました。

大きな変更点は、注射票を廃止したことです。ミキシングされた薬剤は、薬剤科から注射票、注射ラベルとともに搬送されてきます。看護師は、注射票と注射ラベルを1文字ずつ突き合わせ、間違いがなければ注射ラベルを薬剤パックに貼るというのが当院のルールでした。ですが、「その手順に無駄がある。注射ラベルに注射票の情報を記載すればいいのではないか」と「TPS・カイゼン推進グループ」から指摘されたのです。

注射票には、その日患者さまに投与する薬剤の情報がすべて記載されていたため、廃止するのは不安でした。そこで、医療安全チームにも加わっていただき、不安点を解消しながら、注射票廃止を目指しました。他にもプロセスの改善を行った結果、1日約120分の業務時間短縮につながりました。

看護長 柴田悦子さん▲看護長 柴田悦子さん

看護師の動作を見直し、約300工程のうち280以上をタスクシフト

黒田

注射票の廃止と同時に、看護師の動線も変えました。「TPS・カイゼン推進グループ」のメンバーが、看護師の動きに着目し、「もっとこうすればいいのでは」と改善策をどんどん具現化していきました。

柴田

徹底したやり方でしたよね。ストップウォッチを持った調査員が私たちに付き添い、何らかの作業が発生するたびにかかった時間を測定していました。1日の業務時間のうち、電話の対応が何分、ナースコール対応は何分、移動した歩数は何歩と、詳細な業務量調査を行いました。

例えば点滴の投与なら、「トレイを取る」「引き出しから注射器を出す」などの動作が約300工程あることがわかりました。ですが、看護師が本当にやるべきなのは、わずか約15工程です。薬剤科から届いた薬剤を患者さまの元へ持っていき、輸液ラインを作り、点滴をする。それだけでよかったのです。そこで、その他の業務は看護補助者など他のスタッフにお願いすることにしました。

黒田

看護師の業務をタスクシフト/シェアすることで、他の職種の方々の業務は増加します。例えば、セントラルミキシングを薬剤科にお願いすれば、薬剤師の負担は確実に増えるでしょう。さらに、患者さまの安眠確保を目的に、点滴開始時間を0時から22時に変更したため、薬剤師がミキシングする時間も変わることになりました。
一方で、薬剤師の皆さんには「ミキシングは薬剤師がやるべき仕事。それを看護師に任せている」という思いがあったようです。「薬剤師は薬剤師本来の業務を行います。ですから、看護師は業務の効率化によって生じた時間を患者さまのケアに使ってください」と、両者の連携も深まっていきました。
薬剤科との連携もより強固になった▲薬剤科との連携もさらに強固なものになった

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施設名:トヨタ記念病院
住所:〒471-8513 愛知県豊田市平和町1丁目1番地
開設:1987年
事業内容:内科、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、脳神経内科、血液内科、腎臓内科、内分泌・糖尿病内科、リウマチ科、感染症内科、腫瘍内科、緩和ケア内科、
緩和ケア外科、精神科、小児科、小児科(新生児)、外科、小児外科、整形外科、
消化器外科、内視鏡外科、肛門外科、脳神経外科、乳腺外科、呼吸器外科、心臓外科、
血管外科、形成外科、眼科、耳鼻いんこう科、産婦人科、生殖医療・産婦人科、皮膚科、泌尿器科、歯科口腔外科、麻酔科、救急科、病理診断科、リハビリテーション科、
放射線治療科、放射線診断科
内視鏡科*、総合内科*、ゲノム医療科*、集中治療科*、海外渡航科*、臨床検査科*
*印は院内標榜科
ホームページ:https://www.toyota-mh.jp/

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